富士通とシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)の組織であるInstitute of High Performance Computing(IHPC)、Singapore Management University(所SMU)は4月16日、シンガポール海事港湾庁(MPA)と、シンガポール港における船舶の交通マネジメントのための技術を活用して、共同実証を開始した。

今回の共同実証では、AI(人工知能)とビッグデータ解析などを用いて、海上貿易が盛んで船舶の交通量が多いシンガポール港とその水域の管理を最適化する技術を共同で研究開発し、MPAから提供される船舶の交通データをベースに、海上の渋滞予測や衝突などのリスクが高いホットスポットの予測精度を検証する。

富士通とA*STAR、SMUは、2014年に共同で設立した先端研究組織であるUrban Computing and Engineering Center of Excellence(UCE CoE)の下、2015年から海上交通マネジメント技術の研究開発を進めてきた。

今回は、これまでUCE CoEが行ってきた高速・大規模計算科学技術を用いて持続可能な社会創造に向けたソリューション・技術の開発を進めるものとなり、業界や政府が直面する社会課題に応用し、シンガポールの実環境で実証を行う。

共同実証における活用技術は「リスクおよびホットスポットの算出モデル(富士通)」「予測モデル(IHPC)」「インテリジェント・コーディネーション・モデル(SMU)」の3つ。

リスクおよびホットスポットの算出モデルは、さまざまなリスクモデルの統合により、船舶同士のニアミスのリスクを精緻に定量化するモデルや時空間データ解析を用いて、刻々と変化する海上におけるリスクのホットスポットを検出するモデルを用いる。

予測モデルは、機械学習と運動物理学を用いて直近の船舶の軌跡を高精度に予測するモデル、過去の船舶データを活用して、船舶の型ごとの交通パターンに基づいた今後の海上の交通状況を予測するモデルを活用。

インテリジェント・コーディネーション・モデルは、海上における衝突事故やニアミスを防止するために迂回ルートを導出するモデル、リスクが高いホットスポットを減らすために船舶の航行タイミングを調整するモデルを利用する。

今後は、これまでの共同研究開発の成果と、今回のMPAとの検証により得られた知見やノウハウを統合し、富士通の海事向けソリューションとして、提供していく予定だという。