デバイスより重要となるソリューション
だがiPadというデバイス的側面だけで、教育市場で受け入れられるのは難しいだろう。そもそもiPadは、アップルの中では低価格だとはいえ、学校向けディスカウント込みで3万5800円、Apple Pencilを加えると4万5600円。Chromebookと比べると決して低価格とは言えないし、デバイスの選択肢がないのも弱みだ。
もちろん、iPadはインターフェースやアプリケーションなどの面で優位性があるが、それだけでは教育市場へのアピールが弱い。Chromebookが支持を得たのは、教育市場に向けたトータルでのソリューションを用意したからこそ。デバイスやアプリケーション、サービスなどを包括的に提供し、教師が扱いやすいソリューションを用意することこそが、教育市場で受け入れられるには重要になってくるといえよう。
それだけにアップルに求められるのは、学校側に対していかに魅力的なソリューションを提供できるかにかかってくる。この点についてアップルは、コンピューター教育というよりも、iPadを使い生徒達に楽しく学んでもらうことを重視した環境を提供することで、支持を得ていきたい考えのようだ。
実際アップルが、新iPadと同時に打ち出した教師向けのカリキュラム「Everyone Can Create」を見ると、iPadとApple Pencilを用いてスケッチや音楽、写真などのスキルを身に着ける、クリエイティブ教育を重視した内容となっている。従来のコンピューター教育とは異なる方向性を打ち出すことを重視しているようで、そうしたアップルの方針が教育の現場に受け入れられるかどうかが、シェア拡大の鍵を握るといえそうだ。
また日本がそうであるように、教育の現場ではそもそもコンピューターを使うことに慣れていない教師も多く存在する。販売を拡大していく上では、ICT教育の重要性は理解できるものの、それを教育できる人材が少ないという現状に、どのように対応していくかという課題もあるだろう。そうした課題に適切な答えを出せるかというのも、重要なポイントになってくるのではないかと感じている。