日本学士院は12日、優れた業績を上げた研究者に贈る日本学士院賞の今年の授賞者に、生物の細胞内で重要な働きをするイオンポンプの作動機構を明らかにした豊島 近(とよしま ちかし)東京大学教授(63)や、中世フランス語の辞書を編さんした松村 剛(まつむら たけし)東京大学教授(58)ら9人を選んだ。2人には恩賜賞も贈られる。また、自然保護や生物種の保全の分野の優れた研究者に隔年で贈る日本学士院エジンバラ公賞には、人類の起源と進化の解明を進めた諏訪 元(すわ げん)東京大学教授(63)を選んだ。授賞式は6月に東京・上野の日本学士院で行われる。
日本学士院賞授賞者と現職、専攻学科目、授賞対象となった研究題目、年齢(12日現在)は次の通り
【恩賜賞・日本学士院賞】
- 松村 剛(まつむら たけし)東京大学大学院総合文化研究科教授。中世フランス語・フランス文学。「Dictionnaire du français médiéval(『中世フランス語辞典』)」。58歳。
- 豊島 近(とよしま ちかし)東京大学分子細胞生物学研究所教授・東京大学分子細胞生物学研究所附属高難度蛋白質立体構造解析センター長。生物物理学。「原子構造に基づくイオンポンプ作動機構の解明」。63歳。
【日本学士院賞】
- 三佐川 亮宏(みさがわ あきひろ)東海大学文学部教授。ドイツ中世史。「ドイツ史の始まり—中世ローマ帝国とドイツ人のエトノス生成—」。57歳。
- 楠岡成雄(くすおか しげお)東京大学名誉教授。数学。「確率解析と数理ファイナンスの研究」。64歳。
- 丸岡啓二(まるおか けいじ)京都大学大学院理学研究科教授。有機合成化学。「キラル相間移動触媒の創製」。64歳。
- 相田卓三(あいだ たくぞう)理化学研究所創発物性科学研究センター副センター長・東京大学大学院工学系研究科教授。高分子化学・材料科学。「革新的ソフトマテリアルの精密階層設計に関する研究」。61歳。
- 堀江 武(ほりえ たけし)京都大学名誉教授。作物学。「アジア稲作に及ぼす地球温暖化の影響に関するシステム農学的研究」。75歳。
- 長野哲雄(ながの てつお)東京大学名誉教授・昭和薬科大学常任監事・東京大学創薬機構客員教授。薬学・ケミカルバイオロジー。「蛍光特性制御原理の解明およびバイオイメージングへの応用に関する研究」。68歳。
- 清野 進(せいの すすむ)神戸大学大学院医学研究科特命教授・神戸大学名誉教授。代謝学。「インスリン分泌を制御するシグナル伝達の分子機構に関する研究」。69歳。
- 諏訪 元(すわ げん)東京大学総合研究博物館長・教授。自然人類学。「人類の起源と進化—ラミダス猿人から現生人類へ」。63歳。
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