東京農工大学は3月8日、先進宇宙開発を支える「マイクロ推進システム」を、研究者自らが開設した論文が、アメリカ物理学協会の学術誌「Applied Physics Reviews」に掲載されたと発表した。
この論文は、東京農工大学 大学院工学研究院 先端機械システム部門の篠原俊二郎 卓越教授と東京大学 大学院新領域創成科学研究科の小泉宏之 准教授らが世界の研究者たちと執筆したもの。
プラズマを用いた超小型人工衛星(重さ:1kg~100kg)は、さまざまな用途での使用が期待され、急速に発展している。これらの人工衛星では、姿勢や軌道の制御のために、電気推進機からプラズマを噴出して推進力とする「マイクロ推進システム」が必要となる。
今回発表された論文は、2017年6月に、この分野で世界を牽引する研究者がイタリアのバーリに集まり、先進の研究成果と今後の進展に関して行われた議論をベースに執筆されたもの。国際共同解説論文として、11ケ国からの著者で総数20人が携わった。
上記会議の主要メンバーであり、解説論文の著者でもある篠原 卓越教授は長年の高密度ヘリコンプラズマ(磁場のあるところでアンテナに高周波電流を流して生成するプラズマ)科学研究分野において、世界最大や最小サイズなど世界記録を更新する多くの特徴あるプラズマ源の開拓と、生成機構や波動現象解析などの解明を行ってきた。
ヘリコンプラズマを使うことで、1mLあたり10兆個という非常に高い電子密度が得られる。このため、基礎科学だけでなく半導体製造やプラズマロケットなど、さまざまな分野への展開が期待され、注目を集めている。
今回発表された論文によって総括した知見と展望により、今後、さらにプラズマを用いたマイクロ/ナノ衛星や宇宙探査船などの開発分野への幅広い多角的展開が期待される。