ニオイケアへの関心が高まるなか、パナソニックが発売するプロユース消臭剤「nioff(ニオフ)」が、注目を集めている。

  • nioff

  • nioff FOR DOG TOILET

  • nioff 消臭潤滑剤

パナソニックでは、ニオイケア商品として、空気清浄機やエアコンに搭載する「nanoe(ナノイー)」、施設などに導入する次亜塩素酸空間除菌脱臭機「Ziaino(ジアイーノ)」、スーツをかけておけば脱臭する「脱臭ハンガー」といった製品を発売しているが、たとえば、Ziainoの場合には数10分から1時間で消臭効果を発揮し、恒常的にニオイケアを行う場合に適している。

それに対して、nioffは、数10秒から数分というレベルで消臭を行い、「『いま、すぐ』というニオイケアに適した商品」(パナソニック エコソリューションズ化研 開発・渉外グループ長の永安孝弘氏)と位置づけている。

  • パナソニックが手がけている「ニオイケア」に関する商品群

nioffとは

パナソニックは、30年以上にわたって蓄積してきたニオイケア技術をベースに、2015年、自社ブランドの消臭剤「nioff」を開発。当初は、医療・介護施設向けに提供していたが、2017年3月から、愛犬のトイレまわり向けの「nioff FOR DOG TOILET」を発売。2018年1月31日には、人工肛門を使用するオストメイト向け「nioff 消臭潤滑剤」を発売した。

もともとはプロユース向けに提供してきた製品だが、愛犬向けやオストメイト向けといった個人向け用途にも展開を開始。同社直販サイトのパナソニックストアなどで購入できるようにしているため、医療・介護施設向け製品を含めて、一般ユーザーも入手が可能になっている。

「医療・介護施設向けのnioffは、便臭の消臭に最適化したものであり、家庭内のトイレで効果を発揮する。また、焼き肉臭やタバコ臭にも、便臭ほどの即効性はないが、十分な消臭効果がある」(パナソニック エコソリューションズ化研 代表取締役専務の塚本政介氏)。

  • 【左】パナソニック エコソリューションズ化研 開発・渉外グループ長の永安孝弘氏【右】,パナソニック エコソリューションズ化研 代表取締役専務の塚本政介氏

一般ユーザーのアンケートでも、83%が消臭効果を実感。82%のユーザーが再購入したいと回答しているという。

パナソニック エコソリューションズ化研 開発・渉外グループ長の永安孝弘氏は、「今後は、個人向けにもさらに広げていきたい。また、外国人観光客の増加に伴い、ホテルの部屋のニオイが気になるという声も出ている。ホテル市場も今後は有力な市場になると考えている」とし、販売拡大に向けた取り組みを加速することになりそうだ。家電メーカーであるパナソニックが、意外な商品分野で力を発揮しているともいえる。

nioffを担当しているパナソニック エコソリューションズ化研は、パナソニック エコソリューションズ社 ハウジングシステム事業部傘下の企業で、本社は兵庫県西宮市にある。

  • パナソニック エコソリューションズ化研の概要

1962年に富士防火化学として設立され、1963年に松下電工が出資、1967年に100%子会社化している。1985年から消臭剤および消臭フィルターを発売。パナソニックの空気清浄機向けに提供していたが、1995年から消臭剤原液「スーパーピュリエール」を消臭剤メーカーを対象に外販を本格化。また、1991年には在宅介護向けのポータブルトイレ用消臭液の商品展開を開始。2014年には玄関収納消臭システムの開発、販売を開始している。

現在、売上高の65%が無機塗料などの塗料製品で、14%を雨樋用接着剤などの接着剤、8%を電線管用の防塵塗料などが占める。消臭・脱臭・洗浄剤などは10%の売り上げ構成比となっている。「塗料や消臭剤など、材料の機能化設計に強みを持っているのが、エコソリューションズ化研の特徴。化学の会社であり、ニオイケア技術では、30年以上の歴史がある」とする。

また、「パナソニックのニオイケアは、高い安全性と、確かな消臭実感が求められる用途に向けて製品化しており、空間から局所までを網羅した製品展開を進めている」とする一方、「ニオイケアは、周囲への気遣い、ケアする人や、ケアされる人の心理的負担までを考慮した消臭商品が望まれている。知らないうちにニオイケアされていることも必要である」と。ここにも、パナソニックのニオイケア商品づくりへのこだわりがある。

ニオイの分子を化学変化で分解。香りでごまかさない

もともと医療・介護施設向けに商品化されたnioffは、消臭実感と安全性では高い評価を得ている。nioffは、ニオイの困りごとに特化した配合設計により、医療・介護現場からの高い要求レベルに対応しているのが特徴だ。

  • 「脱臭」と「消臭」の違い

医療や介護現場では、尿臭や便臭が困りごとの上位を占めるが、この対策に市販消臭剤を使用しても、76%の人が満足していないと回答している。「排便時の便器内臭気の約87%が硫化水素。だが、家庭用消臭剤では硫化水素の消臭率は3%、業務用消臭剤でも8%に留まる。nioffでは、95%の消臭率を誇り、スプレー後からすみやかに消臭することができる」とする。

これは、nioffが、便臭を解決したいという医療・介護施設の要求に対応し、便臭に最適化した消臭剤仕様に設計している点が見逃せない。さらに、ニオイ分子を分解し、別の物質に組み換える独自の「リコンビネーション消臭」により、即効性を持つとともに、消したニオイは戻さないのが特徴だ。

具体的には、ニオイ分子に亜鉛イオンが触れると化学反応が発生し、ニオイ分子が化学反応で分解。ニオイ分子の分解後、水とニオイのない反応物質に組み換えるという仕組みだ。臭原ごとに対応した配合設計を行い、臭いを香りでごまかすのではなく、構造そのものを組み換えて消臭することになる。

  • nioffでは、「消したいニオイ」に最適化して、成分の配合といった仕様を変えている

これを応用したオストメイト向け「nioff 消臭潤滑剤」では、高い消臭性能と、独自配合による高い潤滑性、抗菌作用を実現。ニオイ分子の組み換えに効果がある銅イオンを利用し、これがニオイ分子に働きかけ、構造そのものを組み換えて消臭する。

消臭性能では、便臭の主成分である硫化水素を、ストーマ袋のパウチ内において1分で99%消臭。nioff消臭潤滑剤がパウチ内をコーティングすることで、パウチから便を押し出す際に、便と潤滑剤が一緒に押し出されるため、スムーズに処理できるという。

そして、愛犬のトイレまわり向けの「nioff FOR DOG TOILET」では、犬の便臭や尿臭に加えて、体臭までケアするように配合設計。ペットを扱うプロの現場からも評価されているという。

一方で、安全性という点では、nioffの構成成分が、水のほかに、化粧品などに使われる酸化亜鉛や、ベビーシャンプーに使われる界面活性剤であることに加え、第三者機関による安全試験を実施。飲んだ場合の毒性を調べる「急性経口毒性試験」、皮膚への刺激を検査する「皮膚一次刺激試験」、目への刺激を調べる「眼刺激性試験」、皮膚反応(かぶれ等)を検査する「皮膚感作性試験」、遺伝毒性の有無を調べる「Ames試験(復帰突然変異試験)」をクリアしているという。

  • パナソニックのニオイケア商品を、縦軸と横軸の項目、位置付けに注目して見てみよう

同社によると、ニオイ物質は約20~40万種あり、そのうち人が区別できるものは数1000種類とのこと。空間のニオイは、数10種類~数100種類のニオイ物質の混合体であり、同じニオイ物質でも濃度によって質が変化。また、加齢、体調、男女差などでニオイの感じ方は異なるそうだ。

こうした異なるニオイ物質に対して、最適化した配合設計を行うことで、ニオイの課題を解決するのが、パナソニックのニオイケア技術というわけだ。

nioffの希望小売価格は、200mlで1,300円(税別)。nioff FOR DOG TOILETは、同1,500円。nioff 消臭潤滑剤は、250mlで2,600円。なお、nioff 消臭潤滑剤は、医療機関や患者に販路を持つコンバテックジャパンを通じて販売している。封を切らなければ、効果に変化はないのでそのまま保存が可能。封を切っても、2年間を目安に利用できるという。

nioffのブランドメッセージは、「『気』にしない自由。」

ニオイを気にせずに生活することができる環境を目指しているという。ニオイという課題を、家電ではなく、消臭剤という切り口からも解決するnioffは、パナソニックグループにおける意外な取り組みのひとつだといえよう。