ソニーが2月27日に発表した「α7 III」(ILCE-7M3)は、まさに「出し惜しみなし」という表現がぴったりの意欲的なフルサイズミラーレス一眼です。ソニー自身は「ミラーレス一眼のベーシックモデル」と評していますが、機能を絞り込んだベーシックモデルではなく、さまざまな機能や装備を過不足なくまとめたバランスのよさが目を引きました。
さらに驚かされたのが価格で、予想実売価格はボディー単体モデルが税別23万円前後、標準ズームレンズ「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」が付属するレンズキットが税別25万円前後と、性能を考えるときわめて戦略的な価格が付けられています。
ソニーが業界に提案する「レンズ交換式カメラの新しい基準となるベーシックモデル」は、ミラーレス一眼のみならずデジタル一眼レフをも巻き込んで、レンズ交換式カメラの市場を大きく揺るがすことになるはずです。早くも今年のヒット間違いなしと予感させるα7 IIIの特徴を、実機写真とともに詳しくチェックしていきましょう。
画素数を2420万画素に抑え、高感度性能をアップ
α7 IIIは、2014年12月に発売した従来モデル「α7 II」(ILCE-7M2)の後継モデルで、外観からはα7 IIとの違いを見つけることは難しいほどそっくりです。しかし、中身は完全に別物になっており、高感度性能やオートフォーカス、高速連写、サイレント撮影、動画機能、バッテリーの持ちなどが大幅に進化しました。
まず変わったのが撮像素子で、新開発した有効2420万画素の裏面照射型フルサイズCMOSセンサーを採用しています。画素数こそ従来のα7 IIとほぼ同等で、有効4240万画素のα7R IIIと比べれば格段に落ちますが、4000万画素を超える大きなサイズの画像はパソコンなどでの扱いが大変なうえ、写真趣味層にとってそれほどの大きな画像を必要とするケースは少なく、画質と扱いやすさのバランスで有効2420万画素は好ましいチョイスといえそうです。
画素数を抑えたことで、高感度性能が向上したのが注目されます。感度はISO100~51200まで対応し、拡張時はISO204800まで高められます。薄暗い場所でも積極的に感度が上げられるので、被写体ぶれなどの失敗写真が大幅に減らせるのがメリットです。
ちなみに、撮像素子はメモリー一体型ではない通常の裏面照射型CMOSなので、α9のようなアンチディストーションシャッター(高速に動く列車などを撮影しても被写体がゆがまずに撮れる機能)には対応していません。しかしソニーの担当者によると、撮像素子自体の世代が新しいため、従来のα7 IIやα7R IIIよりはいくぶん改善されているとのことです。