ラプラタ国立大学宇宙物理学研究所、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、京都大学、国立天文台などの研究者らからなる国際研究チームは2月22日、アルゼンチンのアマチュア天文家であるVíctor Buso氏が観測した超新星が、「ショックブレイクアウト」と呼ばれる爆発したばかりの段階であることを確認したと発表した。

  • ショックブレイクアウトの様子を表す想像図

    ショックブレイクアウトの様子を表す想像図 (C)Kavli IPMU

同成果は、ラプラタ国立大学宇宙物理学研究所のMelina Bersten研究員、同Gastón Folatelli研究員、Kavli IPMUの野本憲一 上級科学研究員、京都大学理学研究科の前田啓一 准教授、国立天文台の田中雅臣 助教らによるもの。詳細は英国科学雑誌「Nature」に掲載された

超新星爆発そのものは良く知られているが、爆発直前の星がどのような構造を有しており、それが爆発の性質にどのように影響するのかについてはよく分かっていなかった。ショックブレイクアウトは、理論的には以前から予測されていたが、超新星爆発が平均して各銀河で100年で1回生じるか(90万時間に1回)どうかという頻度で突然発生し、かつ継続時間の短い現象であることもあり、これまで、これがショックブレイクアウトだという決定的な観測は見つかっていなかったという。

今回ショックブレイクアウトと確認された観測データは、Víctor Buso氏が2016年9月に、自宅で渦巻銀河NGC613付近を撮影したもので、後に超新星SN2016gkgと呼ばれる爆発を捉えたものとなる。研究チームが画像解析を実施したところ、超新星SN2016gkgの初期の急激な増光が間違いなく超新星爆発に伴う衝撃波の出現により生じたものであることが確認されたほか、超新星爆発のその後の進行の様子がモデルによって矛盾なく再現されたことによっても示されたという。

  • Víctor Buso氏が捉えた銀河の画像

    一連の銀河の画像はVíctor Buso氏が捉えたもの。赤い丸が超新星SN2016gkg。右下のグラフは、出現前後の光の輝きで、時間が経つごとに明るくなっていくことが見て取れる (C) Bersten et al.

なお、ショックブレイクアウトは短時間ながら最も明るく輝く瞬間であるため、通常の超新星より、ずっと遠方の超新星が発見される可能性があることから、現在、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC;ハイパー・シュプリーム・カム)」を用いて、遠方まで広視野で撮像を行いショックブレイクアウトを発見するプロジェクトが進行中だという。

  • 観測されたSN2016gkgの光度曲線と爆発のモデル

    点で示された部分が観測されたSN2016gkgの光度曲線、赤線が爆発のモデル。このモデルでは、超新星爆発には3つの段階があることが再現されており、1番目がショックブレイクアウト(数時間スケール)、2番目が衝撃波通過後の冷却による放射(数日スケール)、最後が放射性元素の加熱で生じる放射(数週間スケール)となっている。Buso氏の発見は青の点で示された部分で、ショックブレイクアウトの急激に明るくなっていく段階に相当する (C)Bersten et al.