北海道大学は、ヨモギ上でのヨモギヒゲナガアブラムシの2つの型(赤タイプと緑タイプ)の増殖率の差が、アリがいることにより制御されて、これにより3者全員が利益を得る永続的な共生関係が維持されることを発見したと発表した。

ヨモギヒゲナガアブラムシの赤タイプ・緑タイプとトビイロケアリ(撮影:川内谷亮太)

ヨモギヒゲナガアブラムシの赤タイプ(下方の2匹)・緑タイプ(茎の上側の3匹)とトビイロケアリ(撮影:川内谷亮太)

同研究は、北海道大学 大学院農学院博士後期課程3年生の渡邉紗織氏と同大学院農学研究院の長谷川英祐 准教授らの研究グループによるもの。詳細は、英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

生物多様性の創出と維持は、種内、種間競争により、複数タイプの適応度のバランスが取れているためと考えられてきたが、このメカニズムの実例は少なく、4つしか発見されていない。しかし、集団内の多様性は自然界に多く見られ、もっと一般的なメカニズムがあることが予測される。長谷川准教授らは、生物間の共生関係に着目し、参加者全員が得をする真の共生を可能にする多様性が、自然選択に基づいて進化するのではないかと考えたという。

アリに外敵から守ってもらうアブラムシと、アブラムシの排泄物である甘露から栄養を得るアリは共生関係にある。一般に、生物集団中の複数の遺伝タイプは互いに競争するため、タイプの数が限られるとされているが、ヨモギヒゲナガアブラムシは、アリとの共生によりほとんどの捕食者から守られているにも関わらず赤と緑の2タイプが存在している。資源獲得効率だけ考えれば、アリは栄養価の高い緑タイプだけ生き残らせればいいはずなので、赤タイプが必要な何らかの理由があることが示唆されたという。

  • アリ随伴時とアリ不在時の赤タイプ・緑タイプのアブラムシの増殖率

    アリ随伴時(a)とアリ不在時(b)の赤タイプ・緑タイプのアブラムシの増殖率

同研究グループは、このヨモギヒゲナガアブラムシを用いて、2つのタイプが維持されているメカニズムを調べ、アブラムシの両タイプ間の増殖競争に、アリがどのように干渉しているかを中心に研究を進めた。その結果、アリがいないときは、赤タイプの増殖率は緑タイプより高いが、アリが加わり操作することで両者の増殖率に差がなくなり、共存することが明らかとなった。

アリは、緑タイプから得られる高質の甘露という直近の収穫を犠牲にしても、赤タイプの共存を許すことで、翌年以降も資源を確保できる可能性を高めていると推察される。結果、各参加者が自己の適応度を最大化するという自然選択に基づく適応進化の下で、全員が利益を得る永続的な共生関係と生物多様性が進化したと考えられたという。

今後さらなる解明が進むことで、自然選択の結果、どういう生物間関係が進化するかについて、新たな知見が得られることが期待されるということだ。