―― 今回、「TalentMind」をリリースし、HR(ヒューマン・リソース)分野に新規参入した。そのねらいは何か。

十河氏 これまでのネット広告とは業界が異なるが、ネット広告プラットフォームの開発で培った(機械学習の)技術的な部分は共通しているので、(新規市場参入でも)ゼロからの開発スタートというわけではない。最初はタイでリリースするが、言語のローカライズが完了すれば、すぐに他国でもリリースできる。

HR市場に参入した理由は、「今後必ず拡大する市場である」ことと、「われわれもHRのソリューションが必要だった」ことだ。

われわれの例を挙げると、現在は月間10人のペースで採用活動を進めている。起業当初から「LinkedIn」や現地の求人サイトなどを使用して採用活動をしていたが、最近はメディアで取り上げられることも多く、就職希望者が急増している。1つのポジションに対して200~500人の応募があるのが現状だ。

応募者全員の履歴書を確認し、面接する人材を絞り込むのには工数も時間もかかる。この作業をAI/機械学習によって自動化すれば、採用の効率化が実現できる。また、AI/機械学習が過去のデータ分析に基づきなから判断するので、クオリティの担保や見逃し防止にもなる。

利用する企業の規模や国ごとの人件費の差もあるが、「TalentMind」を利用すれば、採用にかかる現在のコストの10分の1まで削減できるイメージになっている。

  • 組織改変/新サービス発表の会見にはタイ、中国、ベトナム、インドネシアなど、同社が拠点を持つ東南アジア各国のメディアが30人以上が参加した

―― CEOとして業績好調の要因をどう分析するか。

十河氏 われわれがビジネスをしている領域には市場がある。そして、その市場には課題が顕在化しており、(われわれは)それを解決できるソリューション/技術を有している。「伸びる市場に張れている」ことが大きな要因だと考えている。

"アジア"は一括りに語られることが多いが、国によって特性も文化も違う。アジアを制覇するには、各国に現地法人を持ち、現地の優秀な社員がビジネスをする必要がある。だから、われわれの給与水準は高い。国によっては新卒平均年収の2倍を払っている。人材流動性が高い東南アジアにおいて、離職率も低い。会社の価値観を共有し、社員は責任感を持って働いている。こうした人材を有していることも業績好調の要因だ。