作業エリアは、クリーンルームほどのクリーン度を持っているわけでなく"ホワイトルーム"と呼んでいるが、「異物を取り除くために、使用する部品を入れるケースには下部に小さな穴をあけて揺らしたり、機械や人による検査工程をいくつも設けることで、源流に近いところで不具合を発見する仕組みを用意している」(FCM キーボード製造部門アドバイザーの山下大輔氏)という。

  • FCM キーボード製造部門アドバイザーの山下大輔氏

接点部に異物が混入するとキーが入りっぱなしの状態になるといった不具合が起こる。そのため、組み立て時や、印刷および塗装時にも異物不良が起こらないような細心の注意が払われた工程づくりとなっている。

また、使用する部品の内製率を高めているのも特徴で、キーボードやリレーに使われる多くの部品がFCMで作られている。また、金型も自ら生産し、精度の高さを維持。これも品質を維持することにつながっている。さらに、品質を高めるための治具も独自に作られており、生産現場に様々な治具を導入。従業員の工夫が生かされている点も特徴だ。

キーボードに関しては、キートップ、ハウジング、ギアリングといった主要部品をFCMで内製しており、キーボードの組立、キートップの印刷、キートップのコーティングもFCMで行われている。

エリアごとに靴を履き替えて不良を予防

実は、FCMでは、2017年度から品質方針を強化している。オリンジンコントロール(源流管理)を徹底し、問題が起きてから対応するのではなく、事前に不具合を発見するという仕組みにしているのだ。

さらに、従業員および見学者は、エリアごとに、どの靴を履くのかが決められている。そのための今回の取材でも、外から入ったところで靴を履き替え、ミーティングエリアに入り、ミーティングエリアから生産エリアに入るところで履き替え、生産エリアでは防塵服と連動した靴に履き替えるといった具合だ。

製造棟を移ると同じ履き替えを繰り返し、ミーティングエリアに戻るときにもまた同じ履き替えを繰り返す。振り返ってみると、1日で、これだけの靴の履き替えを行ったことはなかったほどの回数になった。これも、異物などを生産ラインに持ち込まないための工夫である。