―― 話は変わりますが、クアルコムが新しいプロセッサのSnapdragon 845を発表しました。どのような感想をお持ちでしょうか。
呉波氏 : 弊社の最新プロセッサ「Kirin 970」は、従来と比べて25倍のAI処理性能があります。Snapdragon 845では3倍と聞いて、思ったより伸びなかったと思いました。
対応するベースバンドも、下り最大1.2Gbpsを2017年9月のIFAで発表し、10月にはKirin 970を搭載した製品としてMate 10を発表しています。Snapdragon 845はまだ製品が出てきておらず、ファーウェイが先行しています。
チップセットを作っているメーカーはありますが、ベースバンドも自社で作れるメーカーはそれほど多くありません。ファーウェイはベースバンドも10年ほどの知見を持っています。ネットワークインフラ、端末、チップセット……、エンドツーエンドでソリューションを持っているメーカーなので、それぞれを単独で手がけるメーカーよりも、蓄積が多いのです。
呉波氏 : プロセッサやチップセットを作る場合には、その能力を検証するネットワークが必要です。ただ、最新のネットワークを構築するのは技術的にも設備的にも難しいですし、たとえ最新のネットワークを作っても、そこで使われる端末がなければ無駄になってしまいます。こういったところでも、ファーウェイの優位性に自信を持っています。
AIをビジネスにするような企業は、今後、雨後の竹の子のようにどんどん出てきます。Mate 10 Proは、AI時代に突入した草分け的な存在になると思っています。また、AIだけでなく、スマートホームでも活用されるでしょう。来年(2018年)には、ファーウェイもグローバルでスマートホーム製品を発表します。日本でも展開したいと考えています。
―― 今年1年を振り返って、ファーウェイにとって、呉波さんにとって、どのような1年でしたか。
上半期はSIMフリー市場が急速に発展しました。スマートフォンに限らず、タブレット、ウェアラブルも含めて拡大しました。下半期は、上半期ほどではなく、ゆるやかなスピードで発展しました。
ただ、スピードが落ちたからといって停滞しているわけではありません。スピードが落ちた一番の理由は、各キャリアが低価格な料金プランを打ち出したからです。成長のスピードは落ちましたが、市場全体の規模は大きくなりました。
その中で、これまでになかった現象が起きています。日本のスマートフォン市場は「逆三角形」で、一番高額なスマートフォンほど数が多いという状況でした。それが今年は「菱形」になり、ミドルレンジが一番多くなりました。
今後は「正三角形」に向けて徐々に変わっていくと予想します。これが市場全体でもっとも大きな変化です。キャリアもミドルレンジの端末を扱い、しかもかなりの数が出ています。スマートフォン自体が「パイプ」となっていて、差別化が難しくなっています。
また、端末の販売チャネルが多様化したのも変化です。キャリアショップや家電量販店での購入がほとんどで、ほかの販路はこれまで0.5%にも満たなかったのが、今年はアマゾンや楽天、MVNOと、どんどん販路が増えています。これらを合算すると、オンラインでのスマートフォン販売が大きく膨れ上がりました。
日本のSIMフリースマートフォン市場に参入するメーカーも増えました。今後も増える見込みで、プレイヤーが増えることで市場規模がさらに大きくなり、全体が盛り上がっていくと思っています。
ファーウェイは、日本のSIMフリースマートフォン市場には非常に自信を持っており、将来も明るいと思います。向こう3年間は速いスピードで発展するでしょう。過去3年間は年30%の伸び率で成長しましたが、今後3年間もこれより低い成長率ということはないと思います。
2018年のスマートフォンは、AI、18:9の全画面、ダブルレンズを各社がこぞって装備してくるでしょう。全画面スマートフォンでないと遅れている、AI機能に対応していないと物足りないというようになるのではないでしょうか。
―― ありがとうございました!!