このように進化を遂げたwena wrist新モデルだが、課題もある。以前に比べ、現在はスマートウォッチへの注目度がかなり低下しており、市場も縮小している。発表会では、そういった状況をどのように考えているのか、という指摘もあった。

それに対し對馬氏は、「スマートフォンなどと比べると市場は小さいかもしれないが、腕時計やスマートウォッチの市場は十分に大きく、今後も成長の余地がある」と強気の見通しを示した。そして、wena wristは既存の腕時計やスマートウォッチなどと競合する関係にはないとも指摘。wena wristの本質部分がバンド部分で完結し、既存の腕時計やスマートウォッチと組み合わせて利用できるという特徴があるため、共存は十分可能と考えているという。

ただ、スマートウォッチとしての機能は、他の製品に比べて飛び抜けたものではなく、どちらかというとありふれたものとなっているため、この点でのアピール度は低いと感じる。競合製品にはない魅力があるのは事実だが、今後はデザイン面だけでなく、機能面へのさらなる追求も必要となるだろう。加えて、海外へ販路を広げることも重要だ。そのためには、電子マネー機能を世界標準であるNFCベースのものに対応させる必要があるとし、現在開発を進めているとのこと。

また、腕時計という長年培われた文化や伝統を大切にするというコンセプトを考えると、時計ヘッドを用意するという点にもやや違和感を感じる。デザインを合わせた時計ヘッドを用意するのではなく、既存の腕時計に合わせたバンドのデザインを用意することこそ、コンセプトを実現する本来あるべき姿だろう。

對馬氏は、まずは製品として立ち上げるには「これは腕時計です」ということを知らせる必要があるために、時計ヘッドも用意したと説明するが、腕時計メーカーとの協業を進めつつ、バンド部の提供に特化した戦略も必要と感じる。ただこの点については、既にいくつかの腕時計メーカーと協議を行い、近々新たな発表ができそうと對馬氏は述べており、今後の展開には期待が持てそうだ。

對馬氏は、wenaプロジェクトの製品は、単なる"商品"ではなく、作り手の思いや感情、願い、思想などが込められた"作品"であると指摘する。

それだけ對馬氏の思いがこめられている証拠で、新モデルでは對馬氏の考える理想へと一歩近付いたのは間違いない。ただ現状では、對馬氏の思いをうまく製品に落とし込めていない部分も多いと感じる。他にはないオンリーワンの魅力を備える製品だからこそ、市場の期待も大きい。その期待にどこまで応えられるかが、今後のカギとなるだろう。