大阪府立大学は、食中毒の原因となる複数種の細菌のナノスケールな表面化学構造をポリマー膜に転写した「混合細菌鋳型膜」の作製に成功し、わずか5分以内で食中毒菌を検出し、細菌の種類やO157、O26といった大腸菌の血清型の違いも識別できる原理を解明したと発表した。
同成果は、大阪府立大学LAC-SYS研究所の床波志保 副所長、飯田琢也 所長、清水恵美 技術補助員、田村守 特任助教らによるもの。詳細は英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
今回の研究では、「混合細菌鋳型膜」に電場をかけて細菌を誘導して選択的にトラップし、膜を設置した水晶振動子の振動数変化から、数分程度の短時間で細菌の含有量と種類を判別することに成功した。
また、熱・紫外光・抗生物質など複数の手段でダメージを与えた細菌の表面状態の違いを識別できることも示し、細菌表面の糖鎖などの化学構造がポリマー膜に転写されることで、高い選択性が得られることを独自のナノ電磁応答理論で解明した。
従来の細菌検査などで利用されている蛍光色素を用いた方法や培養法では、細菌検出に数日~数週間を要する。しかし、同研究で解明した原理を用いれば、肉や野菜などの一般的な食品中であっても細菌の含有量の違いをわずか5分以内に計測できたとしている。
今回の成果を受けて研究グループは、解明された原理を用いることで、未知の細菌の迅速な同定や検出などに役立つ可能性もあり、食品衛生や医療応用など広範な社会的課題に手段を提供すると期待されるとコメントしている。