「若者のアルコール離れ」というキーワードはよく聞くが、実際はどうなのだろうか。NPD JAPANが2016年12月にまとめた調査結果によれば、居酒屋は8期連続で客数が減少しており、6年で店舗数も約1割減、年間売上も1店舗あたりで平均120万円減少しているという。

結果としての「アルコール離れ」はある一方で、飲食店情報を提供する「ぐるなび」の調査によれば「お酒がどの程度好き?」という質問に対し、20代が72%、30代も73.8%が「好き」「まあ好き」と回答している。40代が74.0%、50代は77.6%と、若年層よりも確かに「酒好き」の傾向はあるものの、そう大差ないというのが実情と言える。

  • 飲酒が嫌いなわけではない若年層

客と店、需要と供給のミスマッチ

ではなぜ、若者は居酒屋で酒を飲まないのか。

同じぐるなびの調査で「外食時のアルコールドリンクに対する不満」という質問に対し、「お酒の種類が少ない」「好きな銘柄のお酒が少ない」「料理に合うお酒が少ない」という回答が上位を占めた。これは、店側の論理と顧客側のニーズに格差があると、ぐるなび プロモーション部門 グループ長の高橋 俊也氏は説明する。

例えば同じアンケートの中で明らかになった「顧客が飲みたいドリンク」は、上位から「ビール類(78.0%)」と「焼酎(37.5%)」「ウーロン茶(35.7%)」「日本酒(31.6%)」「ワイン(31.1%)」「チューハイ・サワー類(30.5%)」「ハイボール類(19.7%)」「カクテル類(17.0%)」と続く。

一方で飲食店が販売したいドリンクは「ワイン(31.2%)」「日本酒(28.8%)」が2強と飛び抜けており、「ビール類(22.6%)」「ハイボール類(16.4%)」が続く。来店客が望むビールや焼酎、チューハイ・サワーは居酒屋からすれば「眼中にない」というのが実情だ。

  • 顧客の需要は「ロングテール」だが、供給側は売れ線を決める。これが需給のミスマッチに繋がる

この需要と供給のミスマッチが冒頭の「若者のアルコール離れ」、ひいては"居酒屋 冬の時代"へと繋がるわけだが、この課題に対して解決策を用意したのがコカ・コーラとぐるなびだ。

ぐるなびとコカ・コーラがタッグ

両社は「ビバレージマネジメント」のプログラムを提供する。これは、日本コカ・コーラのソフトドリンクを活用したミックスドリンクのメニューを飲食店に提案するもので、ぐるなびの飲食店向けセミナー、メディアを活用する。

  • ドリンクメニューの提案やプロモーション素材の提供などをコカ・コーラが行う

ミックスドリンクは、チューハイ・サワー類などに代表されるアルコールドリンクとソフトドリンクを組み合わせた飲料で、飲食店にとっては利益率の改善に繋がる"救いの手"だ。飲食店側のみならず、「お酒の種類が少ない」という顧客側の不満の解消にも繋がるため、双方にメリットがある。

日本コカ・コーラ コマーシャルリーダーシップ 料飲ショッパーマーケティング グループマネジャーのイアン・ハフ氏は、「若年層はメニューの魅力の乏しさ、中高年はそもそも飲酒量が減り、飲酒機会も減少する。そうした状況では客単価が下がるのに原価率が高くなる悪循環に陥る。ミックスドリンクによって利益率が改善されるだけでなく、低アルコールのニーズも喚起できる」とそのメリットを強調する。

  • ぐるなび プロモーション部門 グループ長 高橋 俊也氏

  • 日本コカ・コーラ コマーシャルリーダーシップ 料飲ショッパーマーケティング グループマネジャー イアン・ハフ氏

例えば、ビールの原価率は31%、ワインも30%と3割近くあるのに対し、チューハイやカクテルなどのミックスドリンクはそれぞれ9%、11%にとどまる。「とりあえずビール」の1杯目が原価率3割で仕方ないにせよ、2杯目以降にも同じ調子で飲まれていては飲み放題が成立しない。

ビールやワインのミックスドリンクを簡単に提供できるようになれば、そうした店の悩みを解決できるというのが両社の読みだ。コカ・コーラの試算では、ビール・カクテルは原価率22%、ワインカクテルも21%と、チューハイ・カクテルほどではないものの、10%ほど原価率の改善に繋がるといい、居酒屋業態の平均1日客数50名の想定で年間30万円の利益が生み出せるようになるという。

  • 原価率はビールやワインが高め

  • 製品ミックスの改善で平均的な店舗であれば利益が実額で30万円上がる見込みだという