これに対して、従来型の展示内容を踏襲したのがシャープであった。まさにパナソニックとは対照的な展示内容であったといえる。

シャープは中央部に「事業ビジョンステージ」を配置。70型ディスプレイを16台使用して、8K相当の解像度を実現したマルチディスプレイによるステージを用意した。印象的な映像、音楽と共に女性コンパニオンがナレーションを加え、同社の事業ビジョンを紹介してみせた。

シャープは女性コンパニオンが中央ステージで事業ビジョンなどを説明

また、IoTによって各種家電製品を接続し、快適なライフスタイルを実現するデモストレーションを行う「AIoT ワールドステージ」と、超高精細8K映像技術をコアに新たなビジネスの広がりを模索する「8K ワールドステージ」をそれぞれ設け、ここでも女性コンパニオンが、内容をストーリー仕立てで紹介した。

展示内容は、AIoT関連商品や各種「COCORO+」サービスの具体的な連携、発表したばかりの料理キット宅配サービスの「ヘルシオデリ」、CEATEC JAPANでは常に人気者となる「ロボホン」、AIoT対応液晶テレビ「AQUOS」の新製品や8K対応テレビなど、すでに入手できたり、近々購入できるものが中心となっていた。

8K対応テレビをはじめ、いますぐに買える製品を全面に打ち出す

もちろん、IGZO技術を活用したSuper Wide Displayや円形ディスプレイを搭載したDriving Assistantのほか、耳にかけるだけで咀嚼回数やスピードなどを計測し、正しい噛み方を提案する新たなヘルスケアツール「bitescan(バイトスキャン)」、最終糖化産物であるAGEs(エージーイー)の蓄積レベルを簡単に測定できる「AGEsセンサ」など、近い将来に商品化するものも展示されたが、それらが前面にあるわけではなかった。

こうした「期待通りの展示内容」を実現してみせたシャープのブースは、例年通りの終日黒山の人だかりという状況だったようだ。今後、パナソニック型の展示が増えるのか、シャープ型の展示が継続されるのか、出展社にとって、来場者にとって、そして、主催者にとっても注目すべき動向だといえそうだ。

来場者が求める"シャープ型"、一方で差別化には"パナ型"が重要に

もし、パナソニック型の展示が増加するのであれば、出展する企業の業種の幅は今後広がりをみせるだろう。そしてCEATEC JAPANを一度離れたソニーや日立製作所といった企業が、この変化に気が付けば、再出展するという可能性もありそうだ。奇しくも、彼らもB2Bソリューションの拡充を進めているプレイヤーであるからだ。

しかし、シャープ型の展示がこれからもCEATEC JAPANの主力になるというのであれば、主催者はCESやIFAという海外の大規模展示会との競合を見据えながら、その方向性を改めて検討し直す必要がある。実際、今年のブースの盛り上がりを見れば、パナソニックブースよりも、シャープブースの方が確実に盛り上がっていた印象を受ける。あくまで「来場者ウケ」という視点では、理解しやすいシャープ型展示が求められているという結論に至る。

昨日の記事でも触れたように、2年目を迎えた「CPS/IoTの総合展示会」としてのCEATEC JAPANはまだまだ過渡期と言える。CEATEC JAPAN実施協議会では、「来年は、より幅広い業種、業界の参画を促し、『つながる社会、共創する未来』の具現化と実現に向けて、さらなる変革を加速する」と語る。

主催者側は明確にしていないが、CPS/IoTの総合展示会を継続するのではあれば、今後は、パナソニック型の展示内容を増やすように働きかけていくことが見込まれる。それこそが国内外の展示会と差別化できる要素であり、CEATEC JAPANが生き残る道として考えている様子が伺えるからだ。

CEATEC JAPAN 2018は、2018年10月16日~19日の4日間、千葉県幕張の幕張メッセで開催される予定だ。出展各社は、今年の成果をどう評価するのか。そして今回出展した異業種企業やこれまで出展していなかった企業、そして出展をやめた企業が今回のCEATECに対してどんな評価を行い、どんな印象を持ったのか。その結果が、来年のCEATEC JAPANの姿になるはずだ。3年目を迎える新生CEATEC JAPANに向けた動きはもう、始まっている。