CEATEC JAPAN 2017

10月3日~6日までの4日間に渡って開催されたCEATEC JAPAN 2017は、展示会のコンセプトを「CPS/IoTの総合展示会」に変更して2回目だった。異業種企業を含めた新たな出展社が増加し、来場者の客層が変化。CEATEC JAPANそのものの変容を印象づけた。

CEATEC JAPANの主力は、大手電機メーカー各社の展示だが、今年のCEATEC JAPAN 2017では彼らの展示内容にも変化が見られた。その最たる例がパナソニック。というのも、今年のパナソニックブースの特徴は、薄型テレビを1台も展示しなかったからだ。

パナソニックが期待する「オープンイノベーション」

家電見本市、いわゆる「最先端ITエレクトロニクスの総合展示会」時代は、当然ながらテレビの展示が主役だった。もちろん、パナソニックがテレビを展示しないCEATEC JAPANなどは考えられなかったわけだ。しかし、「CPS/IoTの総合展示会」となったCEATEC JAPANには、テレビの展示は不要であるという判断が、同社には働いたようだ。

方向性が変わったその展示の中身は、新たに発表したB2B向けIoTサービス「μSockets」を活用したソリューション展示のほか、RFIDプロトコルを利用して端末への給電と通信を同時に行うマイクロ無線給電、幼児向けソーシャルロボット「cocotto」、温度・湿度などの計測が可能なデバイスを衣服に縫い付けることができるウェアラブルメーカーパッチ、カロリー/栄養素チェッカー「CaloRieco」、顔を撮影した静止画上で、本物のメイクをするかのように自由にデザインができる「メイクアップデザインツール」など。

パナソニックはμSocketsによるソリューション展示などに力を注いだ

本物のメイクをするかのように自由にデザインができる「メイクアップデザインツール」

さらに、2種類のカメラと画像処理技術により非接触で人の感情、眠気、温冷感を推定する「感情・体調センシング」や、独自レーザスキャン技術によって周囲にある物体までの距離と方向を広範囲に計測できる「三次元距離センサ 3D LiDAR(ライダー)」といったように、製品化時期が明確ではなかったり、他社との協業によって利用範囲が拡大すると想定される技術が中心となった。

加えて、ブースの「メインステージ」においても変化が見られた。例年であれば女性コンパニオンがステージに立ち、最新製品・技術を大々的に紹介する演出が行われている。これは、過去のCEATEC JAPANで多くの大手電機メーカーが行ってきた展示手法だ。

だが今年のパナソニックブースは、メインステージとなる部分を「Open Innovation Lab」と呼ぶステージに変え、パネルディスカッションやセミナーなどを毎日4回、テーマを変えて実施した。派手な演出がなく、地味な印象を与えることは否めない。しかしパナソニックは、ブースのど真ん中にこれを設置することで、「来場者との対話を通してオープンイノベーションの創出を目指す」という内容に変えたのだ。

パナソニックは、ブース中央に「Open Innovation Lab」を設置。パネルディスカッションやセミナーなどを行った

実際、パナソニックブースを視察した同社 代表取締役社長の津賀 一宏氏は、「今までのように、パナソニックが正しいと思ったものに対して、時間と金をかけるというやり方はリスクが高い。いかにオープンに手を握り、リスク分散をするかが大切である。パナソニックは社内外とクロスバリューイノベーションというスローガンのもとで、オープンなバリューのチェーンを作るということを中核にしている。Open Innovation Labは、それを形にしたものである」と語っていた。

一方で「家電の展示が無くなった」という声に対して「家電の定義の仕方次第だ」(津賀氏)と反論。製品ユーザーの暮らしに寄り添うものを"家電"と定義すれば、B2Bのようなパートナーシップで作る家電があってもいいと話す。

「サービスという形で、機器を売り切りしないビジネスモデルで作る新しいジャンルがあってもいい。いずれも、暮らしに密着し、お役立ちをするという点では何も変わらない。その点では、パナソニックの考え方には変化がない」(津賀氏)

これまでのパナソニックと同じ展示を期待して訪れた来場者にとっては、従来型家電が用意されていないブースに「期待外れだった」という印象を抱いたかもしれない。しかしパナソニックは、「CPS/IoTの総合展示会」という観点にあわせる形で、新たな展示内容に踏み出したともいえる。

これは、2013年1月に米ラスベガスで開催されたCES 2013でパナソニックブースがB2B中心へとシフトし、来場者を驚かせた時のインパクトに近い。これはB2C中心だったCESが、B2Bを視野に入れた展示会へと踏み出すきっかけになったのは間違いない。