シャープが、ディスプレイ事業における「大日の丸連合」の結成に意欲をみせている。経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は出資を含むグローバルパートナーとの提携によって財務体質、経営体質の強化を図ると発表している。ここに中国企業が名乗りを上げる一方で、シャープも強い関心を示している。

同社でディスプレイ事業を統括するシャープ 上席常務でディスプレイデバイスカンパニー社長の桶谷 大亥氏は、「今こそ日本の各メーカーの強みを生かして『大日の丸連合』を形成し、韓国や中国をはじめとする海外勢に競争優位性を確保しなくてはならない」と訴える。

シャープ 上席常務 桶谷 大亥氏

だがシャープは、2012年のJDI設立時に経済産業省からの参加要請を断って大日の丸連合の結成を破綻させた張本人。なぜシャープは、ここにきて「大日の丸連合」の結成に意欲をみせているのか。それは、自らの失敗の経験がベースにあるようだ。

JDIが模索する提携、有力は中国企業も…

6月にJDI 代表取締役会長 兼 CEOに就任した東入來 信博氏は、「JDIにとって、これが最後のチャンス。利益をしっかりと確保できる会社を目指して、第二の創業に挑む」と語っていた

JDIは2012年4月に、日立製作所と東芝、ソニーの3社の中小型液晶ディスプレイ事業を統合してスタートした会社である。そして東芝のディスプレイ事業にはパナソニックが、ソニーのディスプレイ事業にはセイコーエプソンや三洋電機の事業がそれぞれ統合されてきた経緯がある。そこに、産業革新機構が2000億円を出資して設立したまさに"日の丸連合"の会社であり、2014年には東証一部へ上場も果たした。

しかし2016年度に3期連続の最終赤字を記録し、2017年度業績も最終赤字の見通し。上場後は一度も黒字化していない。そしてフリーキャッシュフローは、2012年の設立以来ずっと赤字だ。産業革新機構はさらに最大750億円とする追加融資を行って下支えに踏み込んだが、その効果は限定的だった。

新たに舵を取る東入來社長は、人員削減や減損会計の適用などによる固定費の削減、生産体制の再編などに取り組む構造改革を発表。さらに今後は、グローバルパートナーとの提携を進める考えを示している。この提携は単なる事業連携だけでなく、出資を含めた多角的なもの。さらに"グローバルパートナー"と呼ぶように、対象となるパートナー企業は、日本の企業には留まらない。実際、中国企業が名乗りを上げているという報道が一部で出ている。

つまり、経済産業省が主導して国内6社のディスプレイ事業を統合し、そこに、産業再生機構が筆頭株主として出資をしてスタートした日の丸連合が、中国企業との連携のもと、再建を図る可能性も出てきたというわけだ。JDIの東入來社長は、「グローバルパートナーとの提携は、実行が先になったとしても、2017年度中には目処をつけたいと考えている」としており、まさに水面下での協議が進められているところだ。

この動きに強い懸念を持っているのが、JDIにとってはライバルとなるシャープである。しかも、シャープは、2012年4月のJDI設立前の経済産業省による参加申し入れに対して、当時の町田勝彦会長がそれを断り、独立した事業推進体制を維持することを決定。中小型液晶ディスプレイ事業の日の丸連合結成の足並みを乱した経緯がある。

当時のシャープの中小型液晶ディスプレイ事業は順調であり、「日本だけでなく、世界の液晶業界をリードしているのはシャープである」という自負もあったのも確かだ。もちろん、その裏には独禁法の関係もあり、シャープがJDIに参加するには時間がかかるという判断も働いただろう。しかし、独自で事業拡大を図れるという自信を持っていたシャープが、「弱者連合」とも言われた3社の統合に、当時、あえて踏み出す理由を探すことはむしろ難しかった。

そのシャープがなぜ、ここにきて「大日の丸連合」として足並みを揃えるべきとの提案を始めたのか。