東京医科歯科大学は、日本人における鼻咽腔、中咽頭に対する咽頭扁桃、口蓋扁桃の気道占有率を年齢区分ごとに計測し、標準値を算出したほか、咽頭扁桃と口蓋扁桃の成長パターンが異なる可能性を示唆した。

同成果は、同大大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野の小野卓史 教授、石田宝義 助教、間邊安寿雅 研究員、東京共済病院腎臓内科の神田英一郎 部長らの研究グループによるもの。詳細は、国際科学誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。

側面頭部X線規格写真を用いて成長期の日本人における咽頭扁桃と口蓋扁桃の気道占有率を定量的に評価 (出所:東京医科歯科大学Webサイト)

成長期において、咽頭扁桃や口蓋扁桃などのリンパ組織は過成長するため、気道に対するそれらの占有率(気道占有率)が上昇し、成長期における呼吸環境が一過性に悪化することがある。先行研究により、リンパ組織は一般的に幼少期に約200%まで過成長した後、成人に近づくにつれてサイズが減少していくと報告されているが、咽頭扁桃や口蓋扁桃が過成長したまま残存している成人患者は少なくないという。また、過大な咽頭扁桃や口蓋扁桃は呼吸障害を引き起こし、身体にさまざまな影響をもたらす。それらに加えて睡眠時無呼吸症候群などの症状を伴う場合、扁桃摘出術を行うことが一般的だが、これまで、気道占有率に対する定量的な評価基準はなかった。

今回、研究グループは、側面頭部X線規格写真を用いて咽頭扁桃と口蓋扁桃の年齢別気道占有率の標準値を算出した。その結果、気道占有率に基づいた身体の成長発育の予測、扁桃摘出術の適応判断などの一助となる可能性や、これまでリンパ組織として同様の成長パターンを示すと考えられてきた咽頭扁桃と口蓋扁桃がそれぞれ異なる成長パターンを示す可能性が示唆されたとしている。

咽頭扁桃の気道占有率(左) 口蓋扁桃の気道占有率(右) (出所:東京医科歯科大学Webサイト)