そして9時35~40分頃、搭乗が始まった。搭乗が終了しても10分ほどタキシングに移らなかったが、これは離陸後に機長のアナウンスで“システムチェックをしていたため”とわかった。この10分がどう影響するのか、S先輩の現在地を知りたかったが、すでに機内なのでスマホの電源は落としている。

広島空港に到着。ここから広島駅を目指す

そしてフライトすること約1時間20分。11時22分頃、広島空港の到着ロビーの床を踏んだ。予定では「11時10分広島空港着」とのことだったので、10分以上ロスしていることになる。そして、真っ先にS先輩の現在地が気になった。早速スマホを起動すると「10:48京都」「11:03新大阪。1分たりとも遅れない日本の新幹線スゴイ!」「11:18新神戸」と、3通のメッセージがS先輩から送られていた。

つまりだ。筆者が広島空港の到着ロビーに足を踏み入れた約5分前、S先輩は新神戸を過ぎたことになる。「さすが飛行機! 一気に大逆転!!」とは思ったが、ここからが正念場だ。というのも、広島空港は広島市街から東に直線距離で約40kmも離れている。ここからリムジンバスで広島駅に向かわなくてはならない。ちなみに、“タクシー利用はナシ”というのが、今回の取り決めだ。

ここで、痛恨のポカ。空港のトイレに寄ってリムジンバス乗り場に向かうと、11時30分発広島駅行きバスが発車したところだった。まっすぐバス停に向かっていればタイミング的に間に合ったはずだ。ただ、ついていたのは、次のバスが11時40分発だったこと。空港リムジンバスは、1本逃すと30分以上待ちというのは珍しくない。それが、10分待ちで済んだのだから、ラッキーだったといえよう。

さて、リムジンバスが出発してからしばらくして、S先輩に「今どこ?」とたずねると、「あと4分で岡山駅」とのこと。新幹線は定刻どおりなら広島駅に12時26分に到着する。一方、11時40分発広島駅行きリムジンバスは、時刻表によれば12時25分に到着予定となっている。これは、かなりきわどい。新幹線のダイヤが乱れることは滅多にないので、おそらく定刻どおりだろう。一方、バスは「渋滞」というマイナス要素がつきまとう。「渋滞しているかどうかがカギだな」とビクつきながら、窓の外を眺めると、山陽自動車道はすこぶる快調に流れていた。

分単位のデットヒートに! 勝負の行方は?

ただ、高速を降り、広島市内に入ると様相が変わった。渋滞とまではいかないが、何度か信号待ちにつかまる。焦りをおぼえ始めたころ、S先輩から「あと5分で到着」とのメッセージが届いた。土地勘がないので、バスが広島駅にどのくらい近づいているのかわからないというジレンマも生じる。スマホの地図アプリで確認すると、広島駅のわりと近くまで来ているみたいだ。

だが、無情にもS先輩から「着いたよ~」のメッセージが……12時27分だったので、ほぼ定刻に着いたのだろう。そして、その5分後「広島駅新幹線口に到着しました」という、バス運転手のアナウンスが流れてきた。わずか5分……旅客機のフライトが遅れなければ、広島空港でトイレに寄らなければ、わずかの時間だが新幹線に勝てた計算になる。そしてS先輩は本来の目的である業務に向かった。一方、筆者は1泊し、広島市内や宮島見学を満喫してきた。

左から原爆ドーム、広島城、宮島の大鳥居