台湾Acerが、業績を回復させている。3年半前に比べて売上高は60%改善し、過去13四半期にわたって黒字化を達成。グローバルのPCマーケットシェアでは、2017年度第2四半期では6位だったものの、AppleやASUSとともに4位グループを形成。シェアを着実に高めてきた。この約3年半、業績回復の道筋をリードしてきたのが、ジェイソン・チェン(陳俊聖)氏である。7月から新たに会長職が兼務で加わり、新たなポジションで目指すのは、「データエコノミーカンパニー」への変革だという。ジェイソン・チェン(陳俊聖)氏に、Acerの今と未来を聞いた。

Acer 会長兼CEO ジェイソン・チェン氏

―― チェン会長兼CEOは、2014年1月にエイサーに入社後、CEOとして、約3年半にわたって改革の陣頭指揮を執ってきました。この3年半で、どんな成果をあげていますか。

チェン氏 : 私は2014年1月にエイサーに入り、その2カ月後にCEOに就任しました。当時は社内にも元気がなく、多くの方から「エイサーは本当に大丈夫なのか」といわれていた時期でした。まず私がフォーカスしたのは、収益性の改善。そして、収益を改善することができる製品の開発。これを市場に投入し、エイサーの新たな流れを認知してもらうことでした。特に重視したのは、自分たちが強い部分を、より強くするということでした。

私は、Intelに在籍していたころシリコンバレーに住んだことがあったのですが、そのときに、子供への教育の仕方で驚いたことがありました。たとえば、子供の通信簿の評価が、Aがひとつで、あとは、CやD、Fの評価だったとします。台湾、中国、シンガポール、香港といったアジア諸国の親は、CやD、Fをひとつでも上にあげて、できればAにまで持って行くといった教育をします。これは日本も同じではないでしょうか。私もそうでした。ときには「なぜ、Fという成績なんだ!」と、子供を叱る親がいるかもしれません。

しかし、米国ではまったく考え方が違います。Aと評価されたものが、子供の将来に役立つもの、あるいは生活や仕事に役立つと判断すれば、ひとつだけのAを誉めて、それをA+、A++に引き上げていくという教育をするのです。これには大きな影響を受けました。

Acerもこれと同じく、弱いところを押し上げるのではなく、Aという強さが発揮できるところを伸ばし、A+、A++にしていくことに力を注いだわけです。この考え方がAcerの成長と、利益を生み出すことにつながっています。

もうひとつは、エイサーの強みを、オプティマイズ(最大化)するということです。この考え方がないと、いくらAランクのものがあっても、意味がありません。

では、エイサーの強みはなにか。全世界160の国と地域で営業活動を行い、それらの国と地域において、パーツの供給、リペアなどのサービスを提供するネットワーク体制を持っていることです。Acerという、世界で認知が高いブランドを持っている点も挙げられるでしょう。これをベースに、PC事業で培ってきた様々な技術や製品が強みだといます。

―― 具体的な成果としては?

チェン氏 : Acerは、3年半前に比べて売上高は60%改善し、過去13四半期にわたって黒字化しています。最新の業績では、利益が過去10年間で最高となっています。そして、グローバルのPCマーケットシェアでは、AppleやASUSと同じ水準にまで上昇してきました。販売単価は2倍にあがっています。これは高付加価値モデルが売れていることを裏付けています。

このように、売上げが上昇し、利益が拡大し、シェアが高まり、販売単価があがっています。Acerという会社が、正しい方向に向かっていることを裏付けるものだといます。

私は、Acerが持つ強みをオプティマイズするために、現在のAcerがどこにいるのかをしっかりと見極め、将来、どこに行きたいのかを決めました。さらにそのためには、どんなプロセスを踏めばいいのかを考えました。

Acerは1976年に設立して以来、約40年間、PCメーカーとして事業を行ってきました。「このままでいいのか」と自問自答すれば、駄目であることは明白でした。変わっていかなくてはいけません。そのときに、我々のチャンスはどこにあるのかを考えてみました。

インターネットはITの基盤ですが、そこにAcerが投資をしていくには遅すぎます。そして、クラウドに対して本格的に投資するにも遅すぎました。では、なにか。そこで注目したのは、「データエコノミー」です。

もちろん、データといっても、FacebookやTwitterのようにソーシャルネットワークをAcerがやるわけにはいきません。Acerが持つハードウェア技術を活用して、なにができるかという点にフォーカスしました。そのひとつが、ゲーミング分野であり、そこに生かすことができる冷却技術です。