ここまで、できるだけ中立的な視点で評価するよう努めてきたが、ここからはガラリと趣向を変えて、極めて個人的な視点でのレビューをお届けしたい。

筆者は普段、ほぼあらゆる作業をMacで処理している。Macユーザーになって早四半世紀、勢い余って編集者/ライターになってしまうくらいの熱烈なMacユーザーだ。そのMacユーザーとしての筆者の独断と偏見(いや、そうでなくとも)で言わせていただければ、MateBook XはMacBookを強く意識している製品だ。

パッケージを開けた時の感動を演出

たとえばMateBook Xは、本体を購入したときの箱も美しい。段ボールむき出しで原色インクで印刷されたパッケージではなく、専用に設計された美しい化粧箱、箱を開けた瞬間に本体が現れる感動、きれいに整理されて同梱物が入った小箱……と、購入したユーザーが感動するような体験が用意されている。これはアップルがMacでやってきたことでもある。

中にはこうした模倣を毛嫌いする人もいるが、筆者としては業界全体のデザインや製品クオリティのレベルアップに繋がるなら、それほど悪いことではないとも思っている。Windowsなのでクリックボタンの動作やタッチパッド ジェスチャ操作に迷うこともあるが(Macと操作感が違うという意味で)、製品としては良い出来だ。

製品は化粧箱入り。箱の天面にはエンボス加工でHUAWEIロゴが刻まれている

同社として国内初のスリムノートPCとなるMateBookで、いわゆるウルトラスリムブックのベンチマークであるMacBookシリーズをリスペクトするのは理解できるし、むしろ細部までよく再現したものだと関心する。個人的にはCore mプロセッサを採用していない点(MacBookの基本モデルはCore m3プロセッサで、上位モデルまたはカスタマイズでi5、i7が選択可能)や、指紋認証機能付きの電源ボタン(Macでは最上位のMacBook Proのみ対応)など、MacBookを上回っている点が多いことを高く評価している。

電源ボタンは指紋センサー兼用。ヒンジ近くで左右に伸びている細かい穴はスピーカー

少しだけ気になる点を言うと、ここまでできるなら単なる模倣ではなく、オリジナルをしっかり咀嚼して自らの血肉にしてほしいとは思う。たとえば中国という歴史ある国家のメーカーなのだから、もっと中国らしい意匠や色を取り入れてもいいだろう。グローバル時代のプロダクトにそれはふさわしくない、というならば、MacBookとは違ったエッジの処理なり、素材の選別なりをして差別化してもいいと思う。あるいは(今回はあえて見送ったとのことだが)、スマートフォンメーカーとして、SIMを入れれば単独でLTE通信できるようにしても良かっただろう。

実力は極めて高い13インチスリムノートPC

デザイン面が注目されがちなMateBook Xだが、実態は性能とコストのバランスがよい、スペックの充実した製品だ。細部の仕上がりも上質だし、性能的にも最新のゲームをバリバリ遊ぶのでなければ十分なスペックがある。ファンレスのスリムノートPCではやや大きめな13インチのディスプレイが1.05kgという軽さに収まっているのもいい。

スマートフォンやタブレットを中心に製造しているメーカーが、クラムシェル型ノートPCでここまでの完成度に到達してくるとは、実際侮れない。ゲーム以外の用途であればメインPCとしても十分やっていけるスペックがあるので、スリムノートPCを検討しているのであれば、候補に入れてみてはいかがだろうか。

MateBook X