世界各国にコワーキングスペースを展開する「WeWork」が、ソフトバンクとの合弁で日本市場に上陸する。2018年には東京でサービスを開始し、年内には拠点を数十カ所に拡大する計画だという。
だが、すでに日本では政府が推進する「働き方改革」に合わせて、多くのコワーキングスペースがオープンしている。果たして後発となるWeWorkがこのタイミングで日本に上陸する狙いはどこにあるのだろうか。
注目すべきは「コミュニティ」の存在
ニューヨーク発の企業であるWeWorkは、米国を中心に世界15か国・49都市に156の拠点を展開する。3月にはソフトバンクが3億ドルを出資し、7月時点では未上場ながら企業価値は200億ドルと評価され、UberやAirbnbと並ぶユニコーン企業としても名高い。
料金は拠点の立地や利用形態によって異なり、空きデスクを利用できるプランはニューヨークで月に400ドル程度。専用デスクや個室はさらに高額になる。だが会議室やプリンター、ドリンクや清掃といったサービスも含まれており、一般的な事務所を構えるよりもコストは25%安くなるという。
同じ都市に複数の拠点を展開することも特徴だ。ニューヨーク市内だけで40の拠点を構えており、契約者は海外を含む他の拠点も利用できる。海外出張時など、街中のスターバックスよりも安心して仕事ができる場所を確保できるのはありがたい。
日本での立ち上げは、ソフトバンクが後押しする。WeWorkの日本法人にはソフトバンクとWeWorkが50:50の比率で出資した。7月には法人向けイベント「SoftBank World 2017」に共同創業者のミゲル・マケルビー氏が登壇し、8月7日にはソフトバンクの決算発表会でも新規事業として大きく扱われた。
だが、WeWorkを単なる貸しオフィス業と見ていては、2兆円を超える評価額はとても説明が付かない。WeWorkの真の価値は事務所そのものではなく、そこで働く人たちのコミュニティにありそうだ。
WeWorkはオフィスを貸すだけでなく、セミナーや交流イベントを開催することでメンバー同士のコミュニケーションを促進している。スタートアップや個人事業主には後ろ盾がなく不安がつきものだが、仕事の融通や人の紹介ができるコミュニティがあることで、安心してビジネスに打ち込めるというわけだ。