いま、地方を中心に「空き家」問題が大きくなっている。家族がそろって引っ越したり、一人暮らしの高齢者が亡くなったりして、住む人がいなくなったまま放置されている住居だ。地方に限らず、都市部の古いマンションやアパートでも同じ現象が起こっている。空き家は、防災や防犯の面からも好ましくなく、自治体と住人にとって頭の痛い問題なのだ。

こうした空き家をサテライトオフィス化できないか……という取り組みを行っているのが、福井県の鯖江市である。鯖江市は、メガネ、漆器、繊維の伝統産業に加えて、ITを第4の産業とすべく積極的な取り組みを行っている自治体だ。総務省の「おためしサテライトオフィス」プロジェクトにおいて、鯖江市は平成28年度の受け入れ自治体に選ばれている(鯖江市を含め10自治体、平成29年度はそれ以外に8自治体)。

空き家をオフィス利用

空き家をサテライトオフィスとして整備、お試し勤務

サテライトオフィスとは、企業の拠点から離れた場所に開設されたオフィスを指す。少々語弊はあるが、本社・支社・支店・営業所としてその地域で企業活動をするのではなく、主要拠点に付随する業務を「サテライト」で行う。

広い意味でとらえれば、サテライトオフィスは働き方改革の一つといえるだろう。総務省のプロジェクトでは、主に三大都市圏の民間企業からニーズを聞き取り、企業のサテライトオフィス開設に向けた自治体の誘致戦略を策定し、実際の誘致・開設につなげる。その先は、都市部から地方への人材流入、地元企業と人材が連携したビジネスの創出へと発展していく。

プロジェクトの採択を受けた鯖江市は、モニターツアーを実施。鯖江市内の空き家をサテライトオフィスとして整備し、興味を持つ企業を招待して公開、さらには一定期間のサテライトオフィス勤務を体験してもらう。今回のツアーには18社26名の参加があり、サテライトオフィス開設を真剣に検討している企業も多かったそうだ。

鯖江市のWebサイトから

加えて、鯖江市のサテライトオフィスは「お試し勤務」も募っており、平成29年8月いっぱいまで続く。お試し勤務する社員の交通費(鯖江市との1往復相当分)、光熱水道費、インターネット利用料などを、鯖江市が負担する。このお試し勤務を通じて、鯖江市は、空き家・空き室問題への対応、進出企業と市内企業との新たなビジネスマッチング、進出企業による雇用促進・人材確保をテーマに、サテライトオフィス誘致に向けた具体的なスキームを検証するという。詳細は鯖江市のWebサイトを参照してほしい。

シャッターが目立つ鯖江市内の商店街。サテライトオフィスは空き物件の有効活用につながるか

鯖江市が用意したサテライトオフィスは、市街地の空き店舗を整備したものが1件、空き家を整備したものが1件、山間部の空き家を整備したものが2件、計4件だ。候補物件も含めると10件弱あるそうだが、立地や痛み具合、大家さんの意向などによって、空き家なら何でもサテライトオフィス化できるわけではない。これらサテライトオフィスには、デルが多くの機材を提供している。デルは、鯖江市のIT環境と取り組みを支援してきた企業の一つだ。