飯田グループホールディングス(以下、飯田GHD)は、大阪市立大学と共同で、人工光合成技術による「IGパーフェクトエコハウス」の実証実験を、年内に沖縄県宮古島で開始すると発表した。

IG パーフェクトエコハウス研究棟の完成イメージ(出所:飯田GHDプレスリリース)

ギ酸から水素を生成して電気を作る流れ(出所:飯田GHDプレスリリース)

同実証実験は、太陽光エネルギーから水素を作り出し、発電給湯を行う技術を確立し、2020年に「人工光合成技術による二酸化炭素消費型の新しい住宅」の完成を目指すもの。現在、温室効果がスの積極的利用方法のひとつとして注目されているのが、太陽光エネルギーを利用し、二酸化炭素を新たな燃料に変換する人工光合成技術である。

この技術を戸建住宅に活用すべく、飯田GHDは2015年、大阪市立大学人工光合成研究センターに共同研究部門を設立。二酸化炭素から水素源となるギ酸を生成・貯蔵し、このギ酸から水素を生成して電気を作ることが実現できれば、新たな人工光合成の応用技術になると考え、共同研究を開始した。

これまでも、太陽光エネルギーを利用して二酸化炭素と水からギ酸を生成する技術は研究されていたが、その反応効率の向上や反応が溶液系に限られているなど実用化に必要な課題が多く残されたままであった。人工光合成により発電した電気で家庭の消費電力の全てを賄うことができる技術を開発することが実現できれば、環境にきわめて優しい未来住宅が実現出来る。同研究チームは、この未来住宅を「IG パーフェクトエコハウス」と命名し、政府が促進するゼロエネルギーハウスより、さらに高い目標レべルを目指しているということだ。

同研究チームは今回の実証実験にあたり、色素・ビオローゲン・ギ酸脱水素酵素による太陽光駆動型二酸化炭素‐ギ酸変換系を金属酸化物基板上にデバイス化することに成功、さらに金属酸化物として酸化チタンを用いることで、ギ酸の生成効率が従前の約6倍に向上させた。又、酸化チタンを用いる事で、ギ酸脱水素酵素が不要となる事も発見した。現在は最適なビオローゲンを用いることで、従前の約12倍までなる技術を獲得することが出来た。また、生成水素から高効率で発電する新技術も開発したということだ。

今回のギ酸生成の高効率化により、例えば戸建住宅の屋根に搭載したギ酸生成装置で得られたギ酸を貯蔵し、さらにギ酸を水素に変換・発電する事で、当該住宅が消費する電力をすべて賄う事が出来る可能性が高まったという。従来の太陽光発電では、発電した電気を雨天時や夜間に使うには蓄電池が必要なため、充放電ロスもあったが、同人工光合成技術では、太陽光エネルギーでギ酸を作り、これをタンクに貯蔵、電気が必要なときに発電するため、充放電によるロスもない。今回の実証実験により、同技術を活用した「二酸化炭素を消費する」住宅の供給実現に向けた第一歩となることが期待される。