東京電力HD 経営技術戦略研究所 リソースアグリケーション推進室 篠田幸男氏

一方、貸与式が行われた東京電力HD 経営技術戦略研究所では、需要家側のエネルギーリソースを活用するための実証事業が進んでいる。“需要家側”などというとピンとこないが、企業や工場、家庭などのことだ。

どういうことかというと、太陽光発電や蓄電池、ヒートポンプなど、エネルギーリソースを持つ需要家側の余剰電力を吸収できないかというものだ。ただ、需要家側は広く分散しており、余剰の把握が難しい。そこでIoTにより分散されている多数のリソースを把握して調整、電力需給のコントロールに役立てるという取り組みだ。

運用にいたれば、火力や水力発電といった巨大な施設を建設しなくても、仮想的なパワープラントが生まれることになる。これは「VPP」(バーチャル・パワー・プラント)と呼ばれており、国が主導している事業だ。

研究所では、このVPPにおいてEVが大切な役割を果たすとしている。日中、クルマは2~3割しか走行しておらず、会社や自宅の駐車場で停車していることが多い。しかも、この時間帯は太陽光発電が最大化するので、電力余剰が発生しかねない。ならば、余剰となりそうな電力をEVに日中に供給し、需要が高まる時間帯にEVから放電しようという考えだ。なおこの際、EVのエネルギーリソース把握は、スマートフォンの利用を考えているという。

インフラ整備も急ぐ

充電インフラの整備も急がなくてはならない。電力販売部門を受け持つ東京電力エナジーパートナー EV普及推進グループによると、「充電インフラが整わなければEVは普及しないし、EVが普及しなくてはインフラを保てない」という“ニワトリとタマゴ”の関係を指摘する。

だが、国の補助金もあってか充電スポットは着実に数を増やし、2017年5月時点で急速充電器設置基数が7,311基、通常充電器設置基数は約20,000基がある。ちなみに、全国のガソリンスタンドは約32,000カ所で、充電器設置基数が迫っている。また、全国には給油所が3カ所以下の自治体が288市町村もあるという。給油所の減少が進んだ自治体では、家庭で充電できるEVが向くともいえる。