2017年6月、神奈川県・横浜市にある東京電力 経営技術戦略研究所の前庭で、ある貸与式が開かれた。貸与対象者は東京都市大学、貸与されるのは2台のEV(電気自動車)。この2台のEVが、将来、大がかりなCO2削減システムの“種”になるかも知れない。

そもそものきっかけは、東京電力ホールディングスが運営するオープン・イノベーションをテーマにしたウェブページ「TEPCO CUUSOO」にて開始された「EV活用アイデアコンテスト」。これは、EVを活用したアイデアを広く募集し、優秀なアイデアの提案者にEVを貸し出すというもので、今年2月から開始されていた。

東京電力HD 代表執行役副社長 技監、安全統括 山口博氏

それから約4カ月、23件のアイデアがこのコンテストに寄せられ、1件の最優秀賞、4件の優秀賞が決定した。その最優秀賞受賞者が、前出の東京都市大学というわけだ。

貸与式の冒頭、東京電力HD 代表執行役副社長 技監、安全統括 山口博氏は、「東京電力グループは、CO2排出抑制などの環境改善に取り組んできた。EVの推進はその柱で、“CHAdeMO”(チャデモ)といった高速充電器の普及、国際標準化への取り組みも行っている」と、EV活用にかける期待の大きさを語った。

貸与されたEVを使って3年間の実証実験

そんななか、貸与式に登壇したのが、東京都市大学 電気電子工学科 准教授 太田豊氏。山口副社長から太田准教授に、ゴールドに輝く大きなカギが手わたされた。この大きなカギを使った貸与式の光景自体は、ゴルフの表彰式やバラエティ番組の賞品授与式などテレビでよく観る少々陳腐(失礼!)なシーンだが、太田准教授にとって、自らのEV活用アイデアの実証実験を実施する長い道のりの入り口になる。

キーを受け取る東京都市大学 電気電子工学科 准教授 太田豊氏(左)

ちなみに日産「e-NV200」が3年間貸与され、同大以外の4件の優秀賞受賞者にも貸し出される。

山口副社長は「日本経済において、運輸産業によるCO2排出は高い水準にある。EV活用や再生可能エネルギーによるエネルギーミックスで、CO2削減を推進したい」と前置きし、「今回の23アイデアはどれも秀逸で甲乙つけがたかった」と、笑みをこぼした。