珍問・奇問は少なめだった質疑応答

質疑応答で最初に指名された株主は、「永守取締役は毎日新聞のインタビュー記事でARM買収に関して孫社長と正反対の意見だったので驚いたが、どちらが正しいのか」と質問。日本電産の社長兼会長でもある永守取締役は「いろんな意見がなければ社外役員は必要ない。私はハードメーカーの人間なので、私なら3,000億円しか出せないと言った。見解の相違であるが、違った意見の社外役員がいて目利きしているということで安心してほしい」と説明。孫社長も「非常に健全な取締役会の経営を行なっています」と苦笑しつつ、「外から見たよりも、買ってよかったと毎日思う」とARM買収の判断や金額は正しかったとアピールした。

2017年度3月期の決算説明会でも孫氏はARMへの期待を語っていた

次の株主は「今後10年先にARMがどうなっているか、キーテクノロジーについて教えてほしい」と質問。孫社長は「スマホの99%はARMを採用しており、毎年30%性能がアップしている。コンピュータにおいてチップを上回る価値のあるものはほかにないが、その99%を提供しているというポジションの重要性。また、今後20年間で1兆個のARM製チップがIoT用として提供される。ARMには10年先までの製品ロードマップが社内にある。10年後に出荷する設計図がすでに社内にある。これは戦略を立てるのにすばらしく役立ちます」と回答した。

次に質問した女性株主は「半導体はEMP (電磁パルス)に弱いが、情報革命を担う会社としてEMP対策はしているか?」と質問。孫社長は「色々とリスクはあるが、毎年技術革新は進んでおり、問題が表面化するにつれて様々な対策を打っている。今日現在の最大のリスクはセキュリティ。問題が大きければ大きいほど知恵を出して頑張っています」と回答した。株主の質問意図としては、太陽フレアや高高度核爆発によるEMP攻撃に対する対策ということだったのではないかと思われるが、ちょっとこれは答えにくい質問だったのではないだろうか。

次に質問した株主は「昨年退任したニケシュ・アローラ氏への退職金が高すぎるのではないか。その分を株主への配当に当てるべきだった」との質問。孫社長は「Googleに勤めている時に一番多額の報酬+ストックオプションもたくさん持っており、数百億円もらえる権利を放棄してソフトバンクに来たので、同等以上を払わないといけなかった」と説明。「ニケシュがやめた代わりに自分が社長としてもどってきた価値はそれなりにあるはず。またやるかと言われればまたあるかもしれない、そういう意味ではあまり反省してない」と回答して笑いを誘っていた。

ニケシュ氏の話題が出たことで後継者問題に話題が集中する。次の株主は「ニケシュ氏が退任したことで後継者問題が出てくる。事業を続けていく中で孫社長が倒れてしまったらというリスクが大きいが、普段健康に気をつけていることがあれば教えてほしい」と質問。孫社長は直接健康法について答えることはしなかったが、「グループ内で5年、10年と経営を担って、十分気心が知れて、同じ方向性で牽引してくれる人を後継者に指名しないといけないと思っている。これから10年かけてしっかりと課題として取り組んでいきたいと思っている。今すぐの答えはない」と、後継者像について回答した。

続いての質問では「ソフトバンクアカデミアで後継者育成をしているようだが現状と今後の構想は。また、そこから後継者は出てくるのか」と質問。孫社長からは「ソフトバンクアカデミアの卒業生から続々と活躍するメンバーが現れている。その中にこれから後継者としてめぼしい人がいるわけではないが、継続してやっていくことに意味があると思っている」と回答。また昨年設立した「孫正義育英財団」にも触れ、「財団を作って、10~20代の優れた知的能力を持つ若者を育成支援している。知識とか知恵を学習するだけではダメで、実際に経営を体験しなければならない」と説明。ただ、今後こうした中から後継者が現れる可能性についても否定はしなかった。