KDDIは21日、第33期(2016年4月~2017年3月)定時株主総会を開催した。1株あたり5円増配の85円となり、15期連続増配を実現した今期。質疑応答では株主から寄せられるさまざまな質問に、同社 代表取締役社長の田中孝司氏らが回答していった。

KDDIは21日、第33期定時株主総会を開催。株主から寄せられる質問に田中社長らが回答していった(写真はプレスセンターにおける様子)

テレビCMを停止しては?

男性株主から「広告代理店の電通が法令違反をした。KDDIは、テレビCMを電通に依頼している大口のクライアントだが、仮にドコモ、ソフトバンクがテレビCMを止めないとしても、KDDIだけはテレビCMを一時的に停止してはどうか」といった提案があった。

これに対して、田中社長は「弊社では電通さんにテレビCMをお願いしてきた。事件は承知しており、当局から調査があった後は、しっかり対応をされていると認識している。そうした状況を鑑みて、引き続き現在のCMを続けている。発注については今後とも弊社のコンプライアンスに準じて行っていきたい」と回答した。

KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

プライバシーは守られているのか

年配の男性株主は「世界的に不安定な情勢が続いているが、通信ネットワークの進化によりこうした状況がつくられた背景がある。国民のプライバシーは侵害されていないか。日本とアメリカは、高度な通信とソフトを通じて水面下でつながっているのではないかと危惧している。通信の秘密は守られなければならない。事業者として、どのように守っているのか」と質問。

取締役執行役員の内田義昭氏

これについて、取締役執行役員の内田義昭氏は「通信の秘密に関しては確実にしっかりと守る仕組みがある。実際に実行して守り続けている。高品質な通信のもとで、ソフトウェアも増えてきた。セキュリティに関しては様々なサイバー攻撃があり、突破される可能性もある。不正アクセスを防御する、ソフトの脆弱性を早く検知して直す、普段からそうした修正を行っている。社員についても定期的に教育、研修を行っている」と回答する。

また、田中社長は「プライバシーの侵害の問題は、憲法にも定められている。厳格に守っているのでご安心いただければ。弊社でもセキュリティオペレーションセンターをつくり、外から攻撃があってもネットワークを守れるよう、万全の準備をしている」と答えた。 続いて、同株主からの「サービスが二極化してきた。高度なサービスも必要だと思うが、安くて簡易なサービスも充実させて欲しい」という要望には「技術の進化は避けて通れないところ。いかにお客さまに分かりやすく、使いやすいものにしていくか。まだまだ複雑なところがあるかと思う。貴重な意見をもとに、新たなサービスを導入していきたい」とした。

au WALLETが認知されていない

中年の男性は「三太郎のCMはずっと続けていただいて、ソフトバンクに対抗して欲しい。そこで、テレビCMでau WALLETの紹介もしてもらえたら。先日、コンビニでau WALLETが使えなかった。レジの店員に『そんなカード知りません』と言われ、買い物ができなかった。au WALLETは、どういった戦略でPRしているのか」と質問。

決済事業は拡大しており、au経済圏も拡大している。しかし一方で「au WALLETの認知度がまだ低い」と株主が指摘

これについて田中社長は「まだau WALLETが認知されていないとのご指摘。もう一度、au WALLETが使える店舗に周知していきたい。ご指摘のコンビニエンスストアではドアにシールが貼ってあるので、株主様にはもう一度、トライして貰えれば。我々も、今後はそうしたことがないよう周知徹底させるなど努力していきたい」と回答した。

ショップスタッフの話すスピードが速い!

まだフィーチャーフォンを利用中だという女性は「ショップで説明されるスタッフの方は若い方ばかり。話すスピードが速くて、どんどん先々の説明をされる。シニアにとっては、ゆっくり喋ってもらいたい。あと、若い女性は声が高くてシニアには聞きとりにくい。もっと分かりやすい説明をしてくれたら。テレビCMの三太郎は楽しいので是非続けて欲しい」と要望する。

個人向けサービスで顧客満足度No.1を受賞、ショップの来店予約を開始するなど顧客体験価値の向上に努めているKDDI。株主から、ショップ店員に向けて要望があった

田中社長は「我々もその点を認識しており、今後に向けて改善したい。貴重なご意見を頂いた。テレビCMの応援もありがとうございます。これからも楽しんで頂けるCMを続けていきたい」と答えた。

UQ mobileで挽回できている?

中年の男性株主は「投資家への説明会では、ワイモバイルの打撃を受けているがUQ mobileでリクープしたい、とのコメントがあった。その後の進捗状況はどうか。また、ガラケーについては今後どうなるのか」と尋ねる。

KDDIでは連結子会社のUQ mobile、J:COM MOBILE、BIGLOBEの3社に注力することでMVNO対策を行っている

これに対して、代表取締役執行役員副社長の石川雄三氏は「UQ mobileの認知度は2016年8月以降に急激に上がった。しっかりリクープできているだけでなく、他社のお客さまも獲得している。また、連結子会社のJ:COM MOBILEにも注力しており、顧客獲得が進んでいる。これをさらに加速して、しっかりお客さまを守りながら、他社さんから入ってこられるお客さんも増やしていきたい」と回答する。

代表取締役執行役員副社長の石川雄三氏

さらに田中社長は「まだまだ3Gのネットワークを使われるお客さんがいる。一方で、全体のトラフィックの中では3Gの割合が減っているのも事実。状況をしっかり調べて、今後も検討していきたいと思っている」と答えるにとどまった。

他社を応援して回線の利用者を増やすという手はないのか

若い男性の株主は「KDDIの通信回線を使用しているmineo、IIJの利用者を拡大していく施策は考えていないのか」と質問。これに対して田中社長は「KDDIでは、2社さんにネットワークを使っていただく立場。mineoさん、IIJさんは自らの営業施策を投入されて拡販に努められている。頑張ってください、とお願いするしかないのが我々のスタンス」と説明した。

来期の第34期も1株あたり5円増配の90円で16期連続増配を実現できる見込み(左)。株主総会の出席者には菓子折やタオルなどが配られていた(右)