米Appleは6月5日 (現地時間)、同社の開発者カンファレンス「WWDC17」で、iOSの次期メジャーアップグレード「iOS 11」を発表した。パソコンに対するiPadの競争力を高め、モバイルAR向けの開発者サポートを強化する。これらの点で、iOSプラットフォームの可能性を広げるアップデートになる。また、Siri、ミッションコントロール、AirPlay、キーボード、メッセージ、マップ、写真、Apple Musicなどにおいて、iOSデバイスの利用体験を向上させる数多くの改善や機能追加が行われる。

パソコンの利点をiPadに

macOSが搭載するDockをiPadでも利用できるようになる。アプリやフォルダを登録し、Dockを活用することで、よく使うアプリを素早く切り替えられるようになる。また、ユーザーの状況に応じて、ユーザーが必要としていると思われるアプリをSiriがDockで提案する。

Dockと、ブラウズしやすくなった新しいAppスイッチャー

ドラッグ&ドロップもサポートされる。例えば、Dockでアプリをドラッグして画面にドロップすることで、マルチタスクの2つめのアプリを画面に配置できる。2つのアプリを並べて表示するSplit Viewでは、写真やURLなどをドラッグして別のアプリに貼り付けることが可能。

「写真」アプリから「メール」に写真をドラッグ&ドロップ

iOSにはMacのFinderに相当するファイル管理ツールがなかったが、「ファイル」という新アプリを使って一カ所でファイルを検索したり、整理できるようになる。iPad内のファイルはアプリ内のファイルを含めて管理でき、さらにiCloud Drive、Dropbox、Boxといったクラウドストレージもサポートする。

「ファイル」アプリでiPadでのファイル管理が容易に

入力機能も強化ポイントの1つだ。キーボードが改善され、キーをタップしてから下にフリックすることで数字や記号などを入力できるようになる。

キーボード全体を切り替えることなく、キーをフリックして数字や記号を入力

Apple Pencil向けに「インスタントマークアップ」が用意された。テキスト入力のために画面をタップするとキーボードが現れるのと同じように、PDF文書やスクリーショット画像などにおいてApple Pencilで画面にタッチするとインスタントマークアップが現れる。メモの中にイラストを書き込んだり、PDFに署名といったことを素早く行える。また、ロック画面で画面をタップすると「インスタントメモ」が開いて、すぐにメモを取り始められる。

ロック画面からすぐにメモ、インスタントマークアップによる「インスタントメモ」

iOSが世界最大のARプラットフォームに

ARKitは、iOSアプリを通じてiOSデバイスユーザーの周りの環境とデジタルオブジェクトやデジタル情報を融合させるAR体験を生み出すフレームワークだ。高速で安定したモーショントラッキング、レベル推定、環境光推定、スケール推定などを可能にし、Unity、Unreal Engine、SceneKitなどをサポートする。例えば、ARKitを用いることで「ポケモンGO」のARモードで、より周囲の環境にとけ込むようにポケモンが表示される。基調講演では、壇上に置かれたテーブルにiPhoneのカメラを向けて、デジタルオブジェクトのコーヒーカップと卓上ランプを机上に配置して動かすデモを披露した。ハードウエアとソフトウエアが統合設計されているiOSデバイスでは、数億台規模のデバイスがARKitの対象になり、基調講演ではARKitによってiOSが「世界最大のARプラットフォームになる」とアピールしていた。

パーソナルアシスタントSiriの声の表現が豊かになり、より自然にインタラクトできるようになる。機械学習と人工知能は日々成長しており、例えば、ユーザーが旅行の予約をする時に、直前に読んでいた記事に書かれていた地名を入力支援の候補として提案するなど、よりパーソナルで関連性の高いアシスタントを提供するようになる。また翻訳 (ベータ版)もサポートするようになり、英語から中国語/スペイン語/フランス語/ドイツ語/イタリア語への翻訳からスタートする。

「写真」アプリは、Live Photosで「ループ」させたり、巻き戻しの「バウンス」、または「長時間露光」といった表現が可能になる。ペットや誕生日といった新しいメモリーが加わり、メモリーのムービーが縦・横どちらにも最適化される。 iPhone 7/ iPhone 7 Plusで撮影した写真にはHEIF (High Efficiency Image File Format)が採用され、これまでの半分程度のファイルサイズで同じ品質の写真を撮影できる。

Live Photosの長時間露光

米国において、Apple Payを使って個人間の小口送金ができるようになる。送金側はWalletアプリに登録してあるクレジットカードやデビットカードを用い、受取側のApple Pay Cashアカウントに入金される。Apple Pay Cashアカウント内の現金は銀行口座へのトランスファーのほか、そのまま個人間送金やApple Payでの支払いに用いられる。

Apple Payを使った個人間送金、米国からスタート

メッセージや通知などで睡眠が妨げられるのを防ぐおやすみモード。それが運転中にも拡大される。車の運転をiPhoneが感知し、運転者がメッセージや通知に気を取られないように「Do Not Disturb」モードに切り替える。運転中に送られてきたメッセージには、ユーザーが運転中であることを自動通知する。

他にもマップの運転サポートとして、ナビゲーションに車線案内が加わる

メッセージとコントロールセンターが再デザインされ、メッセージは左右のスワイプだけで簡単にステッカーやアプリにアクセスできるようになる。コントロールセンターは複数のページに広がっていた機能を1つにまとめ、3D Touchを使ってより多くのコマンドを使用できるようにした。

1つの画面にまとめられたコントロールセンター

iPhoneを片手でタイプしやすくするオプションが用意される。キーボードで地球アイコンのキーを長押しして片手入力を選択すると、キーボード全体が親指側に移動する。

片手でタイプしやすいQuickTypeキーボード

音楽では、Apple Musicで個人プロフィールを作成し、友達同士でフォローしながら聞いている曲をチェックしたり、プレイリストを共有できるようになる。またAirPlayが「AirPlay 2」になり、同じネットワークにつながるホームオーディオシステムやスピーカーをコントロールできる。異なる部屋にあるスピーカーで同時に同じ曲をかけ、それぞれの音量を調整するといったことが可能。

AirPlay 2で複数のスピーカーをコントロール

Appleは5日からiOS 11の開発者向けベータの提供を開始、6月中にパブリックベータをスタートさせ、今秋に正式版をリリースする予定。対応デバイスは、iPhone 7シリーズ、iPhone 6sシリーズ、iPhone 6シリーズ、iPhone SE、iPhone 5s、iPad Proシリーズ、iPad Air 2、iPad Air、iPad (第5世代)、iPad mini 2/3/4、iPod touch (第6世代)など。