世界中で開発が進む超小型ロケット
小型・超小型衛星の打ち上げに特化した、超小型ロケットを開発しているのはVectorだけでなく、現在世界中でさまざまな企業や団体が挑んでおり、開発競争がおこっている。
従来、小型・超小型衛星を打ち上げる手段としては、大型の衛星を大型のロケットで打ち上げる際に、余った打ち上げ能力やスペースを利用して搭載する「相乗り」という方法や、1機のロケットで数十機の小型・超小型衛星を同時に打ち上げる方法、また補給船で国際宇宙ステーションへ運び、放出するという方法などが存在した。これらは基本的に安価で、無償で利用できる場合もあるものの、いずれも投入できる軌道や時期に制約があった。
一方で近年、小型・超小型衛星の需要は高まり、これまで宇宙とかかわりのなかった企業が衛星利用に乗り出したり、数百機から数千機の衛星を使ってインターネットを提供しようという動きも出始めた。その中で、従来の1機のロケットで数十機の小型・超小型衛星を同時に打ち上げる方法に加えて、小型・超小型衛星を1機、あるいは数機単位で、好きなときに好きな軌道へ、そして安価に打ち上げられる手段も求められるようになった。
現在、最も実現に近いのは、米国に拠点を置くRocket Lab(ロケット・ラボ)が開発している「ELECTRON(エレクトロン)」というロケットである。エレクトロンは全長17m、直径1.2mで、高度500kmの太陽同期軌道に、約150kgの打ち上げ能力をもつ。この打ち上げ能力は、数kgの超小型衛星であれば放出機構を含めて数十機、小型衛星であれば1機か2機を同時打ち上げすることができる。すでにエンジンなどの試験を終え、今年前半の初打ち上げを目指している。
また、短時間の宇宙観光ができる空中発射型の宇宙船「スペースシップツー」を開発していることでも知られるVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)も、同じように空中発射で打ち上げる超小型ロケット「Launcher One(ランチャーワン)」を開発しており、最近ではヴァージン・オービットという、ランチャーワンのための別会社も設立された。
このほかにも、米国内で数社、さらに他国でも超小型ロケットの開発が進んでおり、日本でインターステラテクノロジズが開発を行っている。同社は現在、宇宙空間へ届く観測ロケット「モモ」を開発しており、さらに超小型衛星を打ち上げられる能力をもったロケットの開発も行われている。
現在最も成功に近い、ロケット・ラボの超小型ロケット「エレクトロン」 (C) Rocket Lab |
ヴァージン・オービット(ヴァージン・ギャラクティック)が開発中の「ランチャーワン」 (C) Virgin Galactic |
参考
・Vector Becomes First to Complete Successful Flight Test of Launch Vehicle
・Vector Launch Vehicle Family - Vector Space Systems
・Garvey Spacecraft Corporation - NLV
・Vector tests prototype small launch vehicle - SpaceNews.com
・Development of a Prototype Rocket Engine for a Nanosat Launch Vehicle First Stage