「Daydream」対応も実現、MRの可能性は?

そしてもう1つ、グーグルの最新技術としてZenFone ARに搭載されているのが「Daydream」である。これはAndroid 7.0の新機能で、スマートフォンをゴーグルに装着することで、本格的なVR(仮想現実)コンテンツが利用できるというものだ。国内で発売済みのモデルでいうと、モトローラの「Moto Z」やZTEの「AXON 7」などが、既にDaydream対応をうたっている。

Tangoだけでなく、VR技術の「Daydream」に対応することも大きな特徴の1つとなっている

快適なVRの実現には高いハード性能が要求されるため、DaydreamはAndroid 7.0対応端末の中でも、一定のスペック条件を満たしたもののみが対応できる。

それだけにZenFone ARの性能は非常に高く、チップセットにはクアルコム製のハイエンドモデル向け「Snapdragon 821」を採用するほか、スマートフォンでは初だという8GBのメモリも搭載(ZS571KL-BK128S8のみ)。さらにVRを快適に視聴できるよう、WQHD(2560×1440ピクセル)という高い解像度を誇る、5.7インチの有機ELディスプレイも備えている。

しかしながらグーグルは、まだ日本でDaydreamの提供を開始していない。そのためZenFone ARも発売当初からDaydreamのコンテンツを利用できるわけではないとのこと。当面は汎用のVRコンテンツなどを利用する形となるようで、VRの本領を発揮するにはやや時間がかかるようだ。そうした影響もあってか、ZenFone ARはパッケージがゴーグルになる仕組みこそ用意されているものの、専用のゴーグルなどの提供予定はまだないとのことである。

パッケージをVRゴーグルとして活用できる仕組みなども用意されているが、Daydream自体が提供されていないことから、現在は独自のVRコンテンツなどの利用にとどまる

ZenFone VRにVRとARの機能が同時に搭載されているとなると、現実の空間に仮想の物体があたかも存在しているかのような体験ができる、MR(Mixed Reality、複合現実)が実現できるのではないかという期待を持つ人もいるかもしれない。MRの分野ではマイクロソフトのヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」が先行しており、既に建設や医療など、法人向けでの活用が進められている。

だが現在のところ、TangoとDaydreamはあくまで別々に動作する仕組みであることから、ZenFone ARでMRがすぐ実現できるわけではないようだ。とはいえ、これだけ高い性能を持ち、ARとVRの機能を同時に兼ね備えた端末が出てきたとなると、スマートフォンによるMRの実現もそう遠くないように感じる。さまざまな条件がそろう必要があるので今すぐにというわけにはいかないだろうが、将来的なMRの実現にも期待したいところだ。