NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は4月11日、中期事業戦略「ビジョン2020」達成に向けた2017年度サービス戦略説明会を開催した。説明会には同社代表取締役社長の庄司哲也氏が登壇。SDxやハイブリッドクラウド、AI、IoTなど幅広い領域で企業のニーズに応えるため策定したサービス戦略について説明した。

ハイブリットICT環境の最適化へ

NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 庄司哲也氏

同社は昨年度の事業戦略説明会において、2016年度から2020年度にかけた長期戦略「ビジョン2020」および新たなコーポレートスローガン「Transform, Transcend」を発表している。ビジョン2020の2年目となる今年度は、「コーポレートスローガンの実行フェーズに入る年」であるとする庄司氏。昨年度掲げた「グローバルクラウドビジョン」をさらに発展させた形でサービス戦略を進めていくと説明する。

同社はこれまでに、企業向けクラウドサービス「Enterprise Cloud」をグローバルに展開・強化するとともに、クラウドマイグレーションの専門組織を立ち上げるなどクラウド化を積極的に支援してきた。その一方で、ランニングコストの増加や必要な性能要件を満たすことができないという理由から、一部システムをオンプレミスに戻すことを検討している企業もいるという。

こういった背景を踏まえ庄司氏は、「クラウドネイティブのサービスもあるが、オールクラウド化は唯一無二の正解ではない。システムの特徴や優先すべき要件によって、クラウド化すべきものとそうでもないものを区別して、オンプレミスとのハイブリッドな利用の仕方を考えていなかければならないステージに入ってきた」と語る。また、ひとつの企業が複数のクラウドサービスやSaaS事業者のサービスを使いこなす必要があり、マルチでかつハイブリッドなICT利用が進みつつある昨今の状況では、セキュリティやマネジメントの必要性が高まってくる。

そこで同社は今年度のサービス戦略として、「ハイブリットICT環境の最適化」に重点を置く。具体的には「高信頼・高品質なインフラストラクチャの追求」および「"SDx+M"の強化」の2点であるとする。

高信頼・高品質なインフラストラクチャの追求

ハイブリットICTを安心して利用するためにまず重要となるのは、高信頼・高品質なインフラストラクチャだ。同社はグループ企業とともに、海底ケーブル敷設船「きずな」を今年3月に竣工。既存の「すばる」と合わせて、国際競争力を持った海底ケーブルの敷設・保守を進めていく。また、今年6月には米国・ダラスに世界最大規模となるデータセンタをオープン予定。これにより、同社サーバルームの総面積は約40万m2となる。庄司氏は「海底ケーブルネットワークとデータセンタを一元的に設計・提供できるのが我々の強み。今後一層の強化を続けていく」とする。

サーバルームの総面積は39.4万m2

「SDx+M」ソリューションの強化

一方、SDx技術を活用したサービスとマネージドサービスからなるソリューション「SDx+M」の強化については、既存の「Software-Defined Network Service」、「Software-Defined LAN」に加え、今年3月に「Software-Defined Exchange Service」の提供を開始しており、同ソリューションのサービスのラインナップが揃ってきた形となる。これに加え、管理ポータル「Cloud Management Platform」、マネージドサービス「Global Management One」、総合リスクマネジメントサービス「WideAngle」も同ソリューションに対応しており、「すでに多くの引き合いをいただいている」(庄司氏)とのこと。

SDx+Mソリューション

さらに庄司氏は、現在計画されているものとして、他事業者のDDoS対策サービスと従来のDDoS対策サービスを連携させた「マルチDDoS対策サービス」、動画配信サービス業者向けのCDNサービス「Software-Defined Multi-CDN Service」についても紹介した。

他事業者のDDoS対策サービスと従来のDDoS対策サービスを連携させた「マルチDDoS対策サービス」

「Software-Defined Multi-CDN Service」のイメージ。複数のCDNにおける遅延の発生や混雑状況を把握し、独自のデータ分析基盤を活用することで、コンテンツ配信に最適なCDNを選択し自動で配信を振り分ける

コラボレーションによるハイブリッドICT対応の強化

また、同社は他社サービスとのコラボレーションによっても、ハイブリッドICT対応を強化していきたい考えだ。現在、同社サービスに接続できるクラウドサービスは、AWS、Microsoft Azure、Office365、box、salesforceの5つ。これに加えてOracle Cloudとの接続を予定しているという。

NTT Comが接続するクラウドサービス

庄司氏は、この取り組みのひとつとして、Microsoftとの協業について説明。Enterprise CloudとMicrosoft Azureを統合したハイブリッドクラウドを共同開発していくことが今年3月に発表されたが、今後はこれを一元的に運用できるマネージドサービスを提供していく考えを示したほか、さらにコラボレーションを進めることで、Microsoft AzureのクラウドネイティブICT向けのIoTパーツ、AIパーツなども提供できるようにしていきたいとした。

Enterprise CloudのオプションとしてMicrosoft Azureを提供

以上のほか庄司氏は、7月提供予定の「API Gateway as a Service」、IoTとAIを組み合わせた「未来予測ソリューション」などについても説明した。未来予測ソリューションについては現在、複数社とPoCを進めているところであるとし、説明会では三井化学との事例が紹介された。化学プラントだけでなく製造業各社から注目されており、年内の本格展開を目指していくという。

「API Gateway as a Service」の概要。2014年に開発されたAPI GatewayをSaaSベンダーや企業が利用できるようになる

「IoT×IoT 未来予測ソリューション」のイメージ。機器の故障の事前予測などを行う