フジテレビジョン(以下、フジテレビ)と日本マイクロソフトは3月29日、フジテレビの動画投稿サイト「DREAM FACTORY」の運用における提携を発表した。DREAM FACTORYにて、日本語を含めた5カ国語への自動翻訳機能などを用い、国内映像コンテンツの世界配信を目指す。ここでは共同記者発表会の内容をお伝えする。
言語の壁を越えて日本の映像コンテンツが世界に発信されると、どのような効果があるのだろうか。そんな世界をフジテレビと日本マイクロソフトが作り出す。DREAM FACTORYは、フジテレビが2017年1月からスタートした動画投稿サイトだ。
クリエイターがDREAM FACTORYに動画を投稿する際は、「コミュニティ」と呼ばれるタグを付与することで、視聴者が好みの動画を見つけやすくなる。閲覧した視聴者は「LOVE」と呼ばれる投票を行うことで、クリエイターにモチベーションを与えると同時に、動画の客観的な評価を数値として示す。この結果はランキングで示され、日/週/月別で確認できる。
一般的な動画投稿サイトと異なり、投稿した動画は公開前にチェックを行い、肖像権侵害や成人向けコンテンツの配信を未然に防ぐ。
フジテレビは「(テレビ局が運営するため)安全性の担保が重要」(フジテレビジョン 常務取締役 大多亮氏)と抑止機能の重要性をアピールした。
そのほか、自身のプロフィールや作品をポータルとして並べる「マイページ」、FacebookやTwitterなどSNSと連動した共有機能、自治体やスポンサーと連動したコンテストなどの開催を予定している。が、1番の注目点は、2017年7月1日から提供予定の自動翻訳機能だろう。
MicrosoftのBing Speech APIに含まれる音声をテキスト化する機能を利用し、英語・中国語・スペイン語・フランス語への翻訳機能を提供する。こうしたDREAM FACTORYの運用を裏から支えるのは、世界38地域に展開するMicrosoft Azureだ。具体的には、スーパーボールなど世界的なスポーツ大会での配信実績を持つ「Azure Media Services」を利用する。
Azure Media Servicesは、Microsoft Azureが備える機能の1つで、ビデオストリーミングサービスをAPIとして提供するものだ。映像の取り込みと管理、クラウド上でのエンコーディング、AESまたはマルチDRMを使用したコンテンツ保護、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)によるストリーミング配信、JavaScript APIなどを利用した再生環境を提供する「Azure Media Player」などで構成される。DREAM FACTORYでは、顔認証や前述したBing Speech APIなどで構成された「Microsoft Cognitive Services」も利用し、AI(人工知能)の側面からもサービスを強化する。
映像コンテンツを機械学習のトレーニングデータに
今回の提携でポイントとなるのが、映像コンテンツが機械学習のトレーニングデータとなる点だ。機械学習はコンピュータに大量のデータを教材として与えることで、指定ルールに即して自己学習を繰り返し、認識率の向上などを実現する。
フジテレビはDREAM FACTORYの動画コンテンツを日本マイクロソフトに提供し、日本マイクロソフトは動画を日本語の認識率向上や、公序良俗に反する動画コンテンツの自動排除処理精度向上を目指す。
自動翻訳も映像チェックも、従来は人間が行ってきた作業の1つだが、DREAM FACTORYは、機械学習を通じて動画コンテンツから洞察を引き出す「Azure Media Analytics」も利用する。日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏は、「(Azure Media Analyticsは)スタッフを良い形で補完するサービスになると考えている」とした。