名古屋大学(名大)は3月28日、粒子線がん治療に用いる陽子線の飛跡を、陽子線が水中を通り過ぎるときに瞬時に発生する放射線の計測によってリアルタイムに可視化する方法を考案したと発表した。

同成果は、名古屋大学大学院医学系研究科 山本誠一教授、同修士課程の安藤昴輝氏、量子科学技術研究開発機構 山口充孝主任研究員、河地有木プロジェクトリーダーらの研究グループによるもので、国際科学誌「Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A」に掲載された。

物質に入射した粒子線の飛跡をモニタリングする方法には、飛跡に沿って発生する陽電子の分布を撮像する方法がある。しかし、粒子線が物質を通り過ぎてから陽電子が発生するまでには時間がかかるため、リアルタイムでの可視化には適していない。

同研究グループは今回、粒子線が標的内を通り過ぎるときに発生する電子から放出される「電子制動放射線」に着目。同放射線は、エネルギーが低いため計測が容易であることに加え、瞬時にたくさん発生することが知られている。

電子制御放射線の発生。粒子線は標的内を通り過ぎるときに原子の中の電子を弾き飛ばしながら進む。この弾き飛ばされた電子が近傍にある原子の電場によって、急激に減速もしくは進行方向を曲げられたときに電子制御放射線を発する (出所:名古屋大学Webサイト)

そこで同研究グループは、同放射線の発生メカニズムについて調べこれを計測することで、実際の陽電子線がん治療装置を用いて陽子線の飛跡をリアルタイムで可視化できることを実証した。また、がん治療に用いられているビーム強度に対して適用可能であることも確認している。

実験のセットアップ。水を入れた容器に139MeVの陽子ビームを入射し、水中のビーム飛跡から放出される30~60keVの放射線をピンホールガンマカメラで測定することにより、ビーム飛跡を画像化する (出所:名古屋大学Webサイト)

同研究グループは今後、測定効率および位置分解能の高い既存装置の利用可能性を検討することで、粒子線がん治療現場への広範な普及を目指していくとしている。