スマホ化は商品の細分化を実現する

ライフネット生命保険の岩瀬大輔社長は、さまざまなサービスがスマートフォンに最適化された「スマホファースト」として提供されており、海外ではオンデマンド型で小さい単位の保険が誕生して人気を集めていることを紹介した。

たとえば「Trov」は物損保険の一種だが、カメラには「旅行中だけ」、あるいはノートPCには「通勤中だけ」といったように、ごく短い期間だけ保険をかけられる。保険のオン・オフはスマートフォンのアプリ上でスイッチを切り替えるだけだ。保険額自体が数百円程度で済んでしまうので、気兼ねなく利用できる。

一品ごと、使うときだけの極小単位での保険が可能になった「Trov」。審査などはすべてスマホ上から行える(画像はTrovウェブサイトより)

岩瀬社長はこうした例をもとに、スマートフォンへの最適化は「オンデマンドであること」と、「デジタル化による最小単位の微小化」の2つが本質だという。

たとえば民泊サービスのAirbnbは、建物単位だった宿泊施設の貸し借りを部屋単位に細分化したサービスと言える。このように最小単位を小さくできることで、これまでにない新しいサービスを生み出せるのがスマホファースト時代の特徴だという。たとえば物損保険が少額・小単位で行えるようになれば、ネットオークションでの破損等に備えて保険をかけるのも気軽に行えるようになる。

さらにAIの導入も、スマホファーストへの力強い後押しとなっている。スマホファースト時代はとにかく中間にかかる処理時間を省いてスピーディに処理しなければならないが、その処理を早めてくれるのがAIによる判断なわけだ。

また、医療保険などはヘルスモニターの併用などで、医療機関と連携して、より細かく健康を増進させる方向へと進んでいるように、今後はスマートフォンとIoTの組み合わせについても大きな商機を生み出すことになる。こうしたトレンドにいち早く対応するため、組織ごとスマホファーストに対応できるように最適化していく必要があるだろう。

保険事業は事故や事件と密接に関係し、巨額の資金が動くだけに、様々な法規制にも縛られた厳しい世界だ。しかしこうした市場においても、様々な規制緩和やICTの力によって、これまでの保険事業には見られなかったような製品を武器に急成長を遂げている企業がある。ライフネット生命保険の取り組みは、こうした世界的トレンドを日本で実現している好例として、保険以外の領域でも学ぶべきところが大きいのではないだろうか。