たった2つのBIOS項目のみで5GHzまでのOCに成功

それでは、OCにチャレンジしてみよう。お約束の一文を入れておくと、OCはあくまで自己責任の上で行っていただきたい。また、実際の製品では製品個体差もあるので、この検証における動作を保証するものではない。

今回のOC検証における条件についても説明しておこう。今回入手したのは製品前のエンジニアリングサンプル(ES品)だ。この段階のサンプルであればある程度製品版とも近いスペックになっていると思われるが、それでも若干の違いはあると思われるので、その点にもご注意いただきたい。

OCの前に、その手順と確認手段についても説明しておきたい。今回のOCは、BIOS(UEFI)上から設定する。最初は、倍率のみを変更し、VID(コア電圧)については自動(Auto)とし、それが上限に達したところでVIDを引き上げる(もちろん壊れない程度とする)。

OCの成功を判定する方法としては、CINEBENCH R15と3DMarkの完走を条件とした。CINEBENCH R15は十分にCPU負荷が高く、3DMarkはCPU以外の部分に影響が生じていないのかを確認するのに役立つ。その上で、今回のOCにおける最大クロック環境で、実用的に問題が生じないか、OCCT CPU LINPACKも15分間試してみたので、そちらの値も見ていこう。

まずはBIOSの項目のなかでもCPU Core Ratio(倍率)のみを変更していく方法で限界を探る

CPU倍率の設定のみでは、4.6GHzあたりまで問題なく引き上げることができた。パフォーマンスについては後ほどグラフを用意するが、ここまでの動作でチェックしていただきたいのは自動設定だったVIDだ。

CPU-ZやHWMONITORのように、VIDを確認できるツール起動した状態でベンチマークを実行してみると、どのくらいまでVIDが引き上げられているのかが分かる。これがVIDの安全域とも言える。このVIDの最大値を見ていくと、4.6GHz時で1.411Vまで引き上げられていることが分かった。

定格である42倍、VID自動、4.2GHz駆動時のCINEBENCH R15完走状態

CPU倍率46倍、VID自動、4.6GHz駆動時のCINEBENCH R15完走状態。HWMonitorからVIDの最大値を見ると1.411Vだった。一方でCPU温度は最大69℃なので余裕がある

4.6GHz超については、BIOSからVIDを1.4V以上に、少しずつ引き上げて探っていく作業となる。4.8GHzまではBIOSから1.4Vを指定することで動作したが、4.9GHzで一度不安定な動作を見せた。そこでBIOSでのVID値を1.42Vとしてみたところ、5.0GHzまでベンチマークが完走する状態となったが、これ以上は安定動作しなかった。1.42Vでも比較的高い値なので、壊さない程度という前提条件からするとこれ以上の引き上げは気が引けた。

VIDに相当する項目は、先程のCPU Core Ratioの下にスクロールしていくとある「CPU Core/Cache Voltage」。Manual Modeとし、その下のOverrideで1.42Vと打ち込んだ(実際には、その上にある1.424Vが適用される)

ちなみに、OCCTを実行した際の最大温度は、5.0GHz時で87度(CPU-Packageの値)に達している。普段ならば静かな虎徹も、4.6GHzあたりからファンの最大回転数である1,400rpm超を示すようになり、轟音を発するようになる。この点で、OCと静音を両立させたい方は、さらに冷却性能の高いCPUクーラーを選んだほうがよいだろう。

CPU倍率50倍、VID:1.42V、5.0GHz駆動時のCINEBENCH R15完走状態。HWMonitorでのVIDは1.182Vだが、CPU-Zでは1.424Vなのでおそらくその程度。CPU温度も83℃まで上昇しているほか、CPUファンの回転数も1515rpmまで上昇した

では、4.2GHzから5.0GHzまで、200MHz刻みのベンチマークスコアを紹介しよう。

CINEBENCH R15はCPU演算性能を示すため、クロックの引き上げに応じてスコアも上昇していく。とくに4.8GHzがポイントだろう。CPUスコアでは500ポイントを超え、CPU(Single)スコアも200ポイントを超えてくる。なお、Core i7-7700Kでも定格におけるCPU(Single)のスコアは200を超えないので、OCした効果がよく分かる。達成感がある。空冷のCore i7-7700Kでは5.0GHz駆動の難易度が高いので、虎徹のように手頃なCPUクーラーでも実現できてしまうところはCore i3-7350Kの魅力と言える。

一方で、CPUスコアはここまでOCしても、リアル4コアのCore i5-7600K(定格時)には遠く及ばないので、リアルコアとHTTによる4スレッド対応の違いが歴然となる。

3DMarkのグラフでは、CPUが影響するPhysicsスコアのみクロックに応じて上昇するが、Overallである3DMarksとGraphicsスコアには何ら影響はない。

では、5.0GHzが比較的安定して動作することが分かったので、4.2GHz時との差をほかのベンチマークでも見ていこう。

PCMark 8は、CPU処理に対する比重が高いこともあり、OCに応じたスコアの上昇が確認できた。一方で、ゲームベンチマークは、軽いもの、古いものを加えてみたが、OCによる性能向上はなしに等しい結果だった。この時のCPU負荷をリソースモニターから確認してみたが、CPU負荷は全体的に低く、各スレッドどれも似たような使用率だった。おそらく、シングルスレッド性能が重要となるゲーム自体は存在するだろう。ただし、かなり限定されることになると思われる。

OC入門として楽しみつつ自宅用PCとしてのパフォーマンスもまずまず

このように、Core i3-7350Kは、2コア/4スレッドという条件ではモバイル向けのCore i7よりも高性能であり十分な実用性があり、定格であっても普段使い用なら狙い目の製品と言える。コストパフォーマンスを考える際に、もっと安いCore i3やPentiumクラスの製品と比べてどうなのかという点はもちろん重要な点になるが、その場合は「OC」がポイントになる。

OC次第では、24,000円という実売価格以上の「価格性能比」が得られる。そして、上限を探ることや、パーツ選びやコアのOC耐性という運など、自作の「面白さ」も味わえる。言われているとおり、Kaby LakeのOC耐性はなかなか高いものがあるようだ。そこを信じて、果敢にOCにチャレンジしてみてはいかがだろうか。