ambie(アンビー)は2月9日、「"聴きながら、コミュニケーション"を可能に」をキャッチフレーズとしたイヤホン「ambie sound earcuffs」(アンビーサウンドイヤカフ)を発売した。カラーバリエーションは6色あり、価格は税込5,940円。耳道を塞ぐことなく周囲の音と音楽を同時に聞ける、新しいタイプのイヤホンとなる。

ambieの新製品発表会に出席した、高橋メアリージュンさん(左)と高橋ユウさん(右)

ソニー出身のジョイントベンチャー

ambieは、ベンチャーキャピタルのWiL Fund I,L.P.とソニービデオ&サウンドプロダクツの共同出資により設立された合弁会社だ。「人と音の、関わり方を変えていく」を企業理念に掲げており、ソニーの誇る音響技術を、さまざまな業界のプロダクトと自由な発想で掛け合わせて、ユーザーの生活をより良いものに変えるオーディオ製品やデジタルコンテンツを提案していくとしている。

第一弾製品として登場した「sound earcuffs」はオーディオ用のイヤホンだが、従来のイヤホンは耳の穴を完全に塞いでしまい、周囲の音が聞き取れないため、歩行中などに危険や呼びかけに気付けないといった弱点があった。こうした問題を解消する製品としては、骨伝導方式のイヤホンもあるが、装着が面倒だったり、音質が制限される、周囲への音漏れがあるなどの問題が解決されていない。

ambie sound earcuffs

これに対し「sound earcuffs」は、勾玉か人魂のような独特の形状をしており、イヤーパッドが耳の穴をまったく塞がない。内部的には通常のイヤホンと同じドライバーを使用しながら、イヤーピース部が音を直接耳道に吹き込むような独特の形状をしており、耳の穴が塞がれていないのに周囲への音漏れが少ないという状態を作り出すことに成功している。これにより、周囲の音を聴きながら、同時に音楽も聞こえるという状態を自然に生み出している。またケーブルが擦れたり、自分の呼吸の音が気になるといった、イヤホンにありがちな問題も発生しにくい。

耳元まで音導管を使って音を引き込んでくるような設計となっている。耳に触れる部分は柔らかいシリコン様の素材でできている

イヤーカフのように耳殻部分を挟み込むように装着する。イヤーピースがかなり外れやすいので慎重につけよう

周囲の音が聞こえるため、利用中でも他者とのコミュニケーションを妨げることなく音楽が楽しめる。自転車の運転時にも、周囲の音が聞こえるので安全に使えそうではあるが、運転中のイヤホン使用は自治体の条例により禁止されていることもあり、メーカーとしては推奨しないとのことだった。

カラーは6色で展開される。マイク付きの1ボタンリモコン付きで、ボリューム調節はできないが、再生/一時停止、頭出し/前の曲へ移動、次の曲へ移動がシングル/ダブル/トリプルクリックで利用できる

実際にiPhoneに装着して半日程度試してみたが、音量を上げすぎるとさすがにシャカシャカと音漏れがしてしまうものの、中程度の音量であれば音漏れはほぼ気にする必要はないレベルだ。また周囲の音もきちんと聞き取れる。ただし、音質そのものはほかのイヤホンと比較するようなレベルではない。静かなところで音量を上げて聞けば、決して音質が悪いというわけではないのだが、普通に使っていると周囲の音が入り込むため、どうしてもハイレゾ音源などをじっくり聴くという用途向けではない。どちらかといえば個人用のスピーカーが常時自分に付いてまわり、常時音楽が流れている、という印象だろうか。

これについてambieは、BGM的に環境音楽として楽しむためには「ながら聴き」のスタイルが合っているという判断だと説明していた。音楽の楽しみ方がジャンルやアーティストなどを指定して没入型で聴くのではなく、ストリーミング放送などで「Happy」「Relax」「ドライブ」など、感情やシーン別のプレイリストを楽しむスタイルが主流になっていることが関係している。確かにそういうスタイルであればこのくらいのボリュームと聞こえ方が相応しいし、音楽はもちろん、ラジオなどを流しっぱなしにしていても面白そうだ。

イヤーピースは予備が2つ付属する。着脱に慣れないうちは相当外れやすいので予備も持ち歩いたほうがよさそうだ

また、独特の形状と装着のため着脱には必ず両手が必要になる点と、着脱時に折れやすいということで、わざと外れやすくしてあるイヤーピースが、本当に外れやすく失くしやすいという点が、使い勝手の上では気になった。一度装着してしまえば、そのまま会話できるということで、付けっ放しにしていてもまず困らないのだが、着替えなどで着脱する機会が多い人は気をつけたい。

高音質を追求する高級イヤホンとは真逆の存在だが、コミュニケーションを犠牲にせず音楽と触れ合っていられるという点では新しい切り口の製品だ。需要は確実にあると思われるが、装着がやや面倒だったり、音質で評価されると相対的に不利になってしまうといったウィークポイントもある。こうしたウィークポイントを跳ね返して新しい市場を開拓できるのか、注目したい。