取材に訪れた駿台5号館

こうして減少傾向にある高卒生徒を対象にした予備校としては、どうするべきか。駿台は、より低学年への教育へとシフトしている。その表れともいえるのが、関西圏で根を張る浜学園との提携だ。浜学園は灘や神戸女学院といった名門中学に数多くの生徒を送り込んでいる学習塾。当然、そうした名門校に進学した生徒は名門国立や医学部といった難関大学を目指す。その際に、駿台を利用してもらえればという判断があるのかもしれない。さらにこの春、大阪では駿台・浜学園のブランドで小中学生対象の難関公立高校受験塾を新たにコラボで展開する。また、前出の三澤氏は「1年ぐらい利用していただける浪人生も大切ですが、6・3・3=12年の需要がある高卒以下の層の要望にも応えていきたいです」と語る。

大学入試改革への対応はどうか?

さて、ここまで聞いてみると、これまでの受験戦争にのっとったイメージがある。だが、冒頭で記載したとおり、文科省は大学入試改革を進めており、従来の詰め込み型教育よりも“思考力・判断力・表現力”が問われる試験になるという。それの対策はどうか。

駿台教育センター 本部 次長 小澤尚登氏は、「すでにトップ大学は、科目横断型の試験に進んでおり、特に思考力が試されるテストになっています。駿台は、そうした試験に対応した教育を進めております」と話す。

予備校といえば、駿台予備学校、河合塾、代々木ゼミナール、それらの頭文字をとって「SKY」と呼ばれるのが大手3社といわれている。だが“Y”は、不動産業への転身を進めていることが数年前に報道された。少子化を見込んで、ホテルなどに転用しやすい駅前一等地の不動産を教室にしていたのは慧眼といえば慧眼だが、本業から離れることで講師たちはどうなるのか……。ただ、最近ではKADOKAWAのN高校との提携を進め、本業のDNAを呼び覚ましている感じもあるが。それを思い起こした筆者は、取材最後に本業以外のことは? と、駿台担当者に聞いてみたが、あくまでも教育を土俵にするとの答えをいただいた。一例をあげると以前から駿台は大学、高校で教員や在校生、学校運営に向けさまざまな支援プログラムを行ってきたが、16年度には新たにWebブラウザを利用した教務支援と学習サポートeラーニングシステムを加えた「賢者+V」を全国展開している。

さて、駿河台学園は2018年に創立100周年を迎えるという。100年以上の企業は日本に集中しているが、駿台もそうした歴史ある企業の仲間入りを果たすことになる。歴史ある予備校として、今後も教育業界でその存在感を高めてもらいたい。

そうそう。まったくの余談だが、駿台の由来となった東京・駿河台は、江戸幕府を開闢した徳川家康が駿府(静岡県)で鬼籍に入ったあと、その旗本たちが江戸に戻り、その土地に数多くの屋敷をかまえたためその名がついたという。つまり、駿河台に人が集まりだしてから、およそ400年……。駿河台学園はその4分の1にあたる歳月をここにかまえていることになる。