ルネサス エレクトロニクスは2月7日、次世代の電気自動車(EV)向け車載マイコンに搭載するモータ制御専用回路「IMTS(Intelligent Motor Timer System)」を開発し、EVモータ制御の必須処理であるフィールド指向制御演算を、CPUでソフトウェア実行する場合に比べ、約1/10以下となる演算処理時間0.8μsを実現したと発表した。

同成果の詳細は、2017年2月5日から米国サンフランシスコで開催されている「国際固体素子回路会議(ISSCC 2017:International Solid-State Circuits Conference 2017)」にて発表された。

モータ制御では、マイコン内部のタイマで管理される制御周期時間ごとに、モータ電流値・角度値の取得、次の制御周期の制御値を決定するためのフィールド指向制御演算、この制御値に従ったPWM出力といった一連の固定的な処理を行う必要があるが、この処理負荷は複数のモータ制御を同時に行った場合、40nmプロセス車載マイコンに搭載されている320MHz動作CPUでは、最大約90%相当の負荷に達してしまうという課題があった。今回開発されたIMTSは負荷の重い演算処理であるフィールド指向制御演算を専用回路化したほか、モータ制御専用タイマ回路と密結合した構成を採用。タイマ回路で管理される制御周期ごとに電流値・角度値の取得からPWM信号出力までの一連の処理をすべてCPUと独立して自律的に処理できるようにしたという。

また、これによりCPU負荷を削減することが可能となり、代わりにエネルギー効率向上のための先進的制御アルゴリズムを適用したソフトウェアを搭載することも可能となったという。さらに、マイコンに搭載するCPUコアを二重化するロックステップデュアルコアシステムを用いてIMTS回路内部を定期的に監視する方式を採用。これにより、低コストを維持しながら高速制御と機能安全性の両立も可能となり、CPU負荷も実用的なケースであっても2.4%(想定)に抑えることが可能とした。

加えてIMTSは、各種センサデータの取り付け位置による誤差などに対し、ユーザープログラムにてリアルタイム補正をかけることが可能な構成を実現しており、CPUに負荷をかけることなく、補正処理を適用することも可能で、補正処理を施したセンサ信号値でモータ制御演算を行うことで、高精度な演算処理を実現でき、これによりモータ運転時のエネルギー効率向上につなげることができるようになったとしている。

なお、すでに同社では40nmフラッシュメモリプロセスを用いたマイコンを試作、実システムでの動作を確認していると説明している。

IMTSを搭載したマイコンシステムの概要