森永製菓「ダース」、リーボック、アーティストAI、きゃりーぱみゅぱみゅ……名だたるブランドやアーティストからオファーを受け、今もっとも"it"な女性イラストレーターとして知られるChocomoo(チョコムー)さん。モノクロでありながらポップなデザインは、今や日本の若者だけでなく海外からも高い評価を受けています。

京都出身の女性イラストレーター、Chocomooさん

アパレルからアーティストのアートワークまで、幅広いシーンで活躍するChocomooさんの秘密を探りました。

仕事は「好き」と「遊び」でできている

高校卒業後、犬が好きだったことからトリマーとして働き出すものの、猫アレルギーであることが判明し退職。洋服とデザインが好きだったので、地元京都の洋服店で働きながら、イラストを描く生活を続けていました。

転機は、音楽好きが高じて訪れたニューヨーク。始めは観光目的だったものの、ニューヨークの魅力にとり憑かれ、頻繁に渡米するようになります。

Chocomooさんと作品

「ある日ニューヨークの公園でイラストを描いていると、たまたまギャラリーを持つ人に『展示をしてみないか』と声をかけられたのです。展示した絵が売れて、そこで初めてイラストで仕事ができることを知りました」とChocomooさんは振り返ります。

帰国後もニューヨークで描いた絵をブログにアップしていると、とあるファッションブランドに声をかけられ、コラボレーションTシャツを製作。そのTシャツを東京で展示したところ、歌手のAIさんがたまたま見に来たことがきっかけで、ツアーグッズのデザイナーに抜擢されます。

「オファーはニューヨーク滞在中にいただきました。ちょうどAIさんはリハーサルでLAに来ていて、たまたま私もLAに遊びに行く予定だったので、そのまま打ち合わせしちゃって、トントン拍子で仕事が決まりました」。

作品にも遊び心溢れるイラストが多い

すべてのきっかけが「好き」や「遊び」でできているChocomooさん。「全部遊びですし、今も遊びです(笑)。絵を描くのが好きなので、いい意味であまり仕事とは思いませんし、義務感もありません。アートフェスも『海外に行けるワーイ!』と思って楽しんでいます」。

デザイン学校には通わず、完全に独学。営業はかけない代わりに、ブログやSNSへ作品をアップすることで依頼を受けることもあるといいます。さらに今は、地元京都と東京を行き来するデュアルライフを満喫中。従来のイラストレーターの型にはまらない生き方が、オリジナリティのある作品につながっているのかもしれません。

小学校1年生から高校3年生まで習字を習っていたChocomooさん。モノクロの作品は習字や日本画の影響が大きいのだそう

iPad ProとApple Pencilで「人生マジ変わった!」

その独創的な生き方は、新たな働き方も生み出します。きっかけは2016年、iPad ProとApple Pencilとの出合いでした。

「以前ペンタブレットにトライしたことがありましたが、何回やってもアナログとの感覚の違いに慣れなくて。私自身アナログ人間でパソコンも苦手なので、正直iPad Proにも不安がありました」。

しかし実際に触ってみると、本当に紙に描いているようなペンの感触で、「こんなに進化しているのか!」と描き心地に衝撃を受けたのだそう。

インタビュー後、「バレンタイン」をテーマに即興で描いてもらうことに

「手を画面上について描けたり、筆圧が思い通りに伝わったりするのがすごいと思います。Apple Pencilは限りなくアナログで描いたときの温度感のままで、デジタルで簡単にデータに残せるので、違和感がありません」。

慣れた手つきでアプリ「Adobe Illustrator Draw」を操作します

アナログの感触も残しておきたいので、たまに紙に描くことはあるそうですが、今では作品のほとんどをiPad ProとApple Pencilで製作しているとのこと。

約3分であっという間にキュートなイラストが完成! デザインを真似してバレンタインのメッセージカードにイラストを添えてみては?

さらにChocomooさんを驚かせたのが、劇的な生産性の向上でした。「寝る時間がすごく増えたんですよ! 大げさな話抜きで、人生マジで変わりました! たぶん使っている人の中で私が人生一番変わったと思う!」と、インタビュー中にもかかわらず大興奮。具体的に何が大きく変わったのでしょうか?

  • メリット1:アナログで描いたイラストをデジタル化する手間がなくなった

これまでの約10年間、スケッチブックなどにフリーハンドで描いて、スキャナで取り込み、全部データに起こしていたChocomooさん。「細かい絵を描けば描くほど、スキャンすると線画がギザギザ(ジャギー)になってしまうので、きれいなラインにするためにいちいち修正する必要があり、大きなストレスでした」と振り返ります。今では直接iPad Proに書き込むため、データ化の時間が大幅に短縮されました。

細かいイラストでも線画にアンチエイリアスをかける必要はありません

  • メリット2:デジタルならではの機能で作業効率アップ

下書きをせず一発書きすることも多く、途中で失敗すると、性格上イチから書き直していたそうです。「それもiPad Proなら間違ったところだけ消せます。レイヤードもできるので、キャラクターの下に別の背景を重ねられることにも感動しました」。

パッケージデザインの場合、従来は自分でプリントアウトして薄い紙にトレースし、それをまたデータ上で重ね合わせる作業が必要でした。今はデータで送られたものをアプリ上で開いてその上に描けばいいので楽なのだそう

  • メリット3:荷物が減り移動が楽になった

これまではノートやポスカを大量に持ち運んでおり、筆箱だけでもバスタオルをぐるぐる巻きにしたほどのサイズがあったそう。「今は出先での打ち合わせや海外の仕事の際は、iPad ProとApple Pencilだけ持っていけばいいので、かなり楽になりました」。

iPad ProとApple Pencilを仕事に取り入れた結果、従来は3日かかっていた作業が1日に短縮するなど、作業時間が短縮でき生産性が大幅アップ。「2016年は以前の倍近く仕事量を増やせましたね。時間が足りずイラストを2パターンしか提案できなかったものが、同じ時間で5パターン出せるようになりました。修正依頼が来たときにすぐに対応できるなど、データのやり取りの手間も減りました」。

「写ルンです」とのコラボでもiPad ProとApple Pencilが活躍したそうです

Chocomooさんは「寝る時間が増え、ストレスが減り、生産性も上がった」と大喜び。「ちょっと都合がよすぎるんじゃないのー?」と疑う人もいそうですが、当初苦手意識があったにもかかわらず、先入観を捨ててトライする柔軟性と積極性を持つ彼女だからこそ、その恩恵を受けていることを忘れてはいけません。

Chocomoo10周年は「映像に挑戦したい」

毎年はじめに手帳に目標を書くと、不思議なことにそれが達成できるというChocomooさん。2016年は「チョコが大好きだから、チョコのパッケージをやりたい」と書き、森永ダースでその夢を叶えました。

ダースとのコラボは、Twitterで森永製菓の公式アカウントから、「Chocomooさん大好きです」とリプが来たのがきっかけ

Chocomooさんが「私も大好きです」と返信するとダイレクトメッセージが届いたそうで、「チョコのパッケージをデザインさせてください」とラブコールを送り、すぐに打ち合わせが始まりました

「チョコが大好きで、昔チョコとミルクの『Chocomoo』というドリンクをよく飲んでいたから周りからChocomooと呼ばれ始めたくらい、チョコが好きなんです。これまでさまざまな企業とコラボさせていただきましたが、チョコのパッケージを手掛けたことはなかったので、手帳に書いたらなんと叶いました」

2017年の手帳にはどんな目標を書いているのかと尋ねると、「映像をもっとやりたいと書いています。今は平面の作品ばかりなので、キャラクターが動く作品にトライしたいですね」と明言。また2017年は「Chocomoo」として活動を始めて10周年となるため、「イベントもやりたい」と意欲を見せます。

「描けへんときは寝てしまえと思うくらい、すごく楽天的なのであまり悩みません。作業量に対して結果が出なかったら凹みますし、打ち合わせも大変ですが、それも楽しい。嫌なことは避けてきた人生です(笑)。だから逆に好きなことややりたいことは、強く思うとできることが多いですね」。

好きなことを仕事にし、ウェブをフル活用して縁を作り、iPad ProとApple Pencilで生産性を高める。地元京都と東京を行き来するデュアルライフを送り、活躍の場はグローバルに広げている……。

「未来の働き方」としてここ数年、社会論で取り上げられてきたような方法すべてを、Chocomooさんは類稀なるセンスで感覚的に自分のものにしているようです。従来の考え方に縛られず、新しい製品や概念を積極的に取り入れる感性を持つChocomooさんだからこそ、iPad ProとApple Pencilを使いこなし、他の人に真似出来ない、唯一無二のデザインを生み出せるのかもしれません。

イラストレーターChocomooさんがiPad ProとApple Pencilでドローイング

Website:Chocomoo work
Instagram:@yukachocomoo
Twitter:@yukachocomoo