アイリスオーヤマは1月18日、2016年度における家電事業の業績と、炊飯器の新製品について、説明会を行った。

日用雑貨を手がけるメーカーが、家電に本格参入するまで

アイリスオーヤマは、大手家電メーカーを退職した技術者を大量採用し、2009年から家電事業に本格参入。本社は宮城県仙台市に構えるが、大手家電メーカー出身の技術者は多くが関西に住んでいることもあり、2013年には「大阪R&Dセンター」を開設するなど家電事業に本腰を入れてきた。3年目となる2016年度、家電事業の売上実績は485億円。2015年度の400億円から20%の成長となり、アイリスオーヤマ全体の売上(1,220億円)に占める割合は前年度の約37.7%から約39.8%へと拡大した。

アイリスオーヤマ 家電事業部統轄事業部長の石垣達也氏は「2013年に大阪R&Dセンターを開設し、社内の技術力の向上を図った。2016年度はようやく作りたいものを作れるようになった」と振り返った。

アイリスオーヤマ家電事業部統轄事業部長の石垣達也氏

売上を伸ばした要因として、技術力以外に販路の拡大を挙げる。

アイリスオーヤマはもともと日用雑貨品を数多く手がけており、ホームセンターにおける売上が半分以上を占めていたが、「2016年度は家電量販店やネット通販の売上が伸びた。家電メーカーとしての認知度と販売実績が徐々に高まり、家電量販店での取り扱いが増えてきている」と石垣氏。家電事業の売上目標額は730億円で、アイリスオーヤマ全体の目標1,550億円に対して、比率も半分程度までさらに伸ばすことを目指す。

これまでの販路の主流だったホームセンターに加えて、2016年度は家電量販店・ネット通販の構成比が拡大。2017年度もさらに伸ばしていきたい考え

アイリスオーヤマの家電事業は、「なるほど家電」のコンセプトで製品を展開する。シンプルかつリーズナブルな値ごろ感に加えて、消費者に「なるほど」と思わせるような付加価値を加え、家電業界における知名度を徐々に高めてきた。「弊社は、日用品メーカーとして培ってきた消費者の不満を解消する目線がある。今後もそれを活かして価値ある新製品を出していきたい」と石垣氏。

"値ごろ"な炊飯器を提案

家電事業の中でも特に業績をけん引しているのは、炊飯器や精米機といったお米関連の家電だ。2016年度の販売実績は10億円を達成。今後も、2017年度は30億円、2018年度は60億円と大きな目標を掲げる。

炊飯器は、10万円前後の高級製品が各メーカーから発売されているほか、最近ではバルミューダが新製品を発表するなど、家電業界において盛り上がりを見せるジャンルだ。アイリスオーヤマの参入は2015年11月と後発だが、「値ごろな価格」と「炊き上がりのおいしさ」が消費者に受け入れられ、販売は好調に推移、2016年度末は供給が間に合わない状態に至ったという。

アイリスオーヤマ 調理家電事業部事業部長の平元佑司氏は「日本全国に東北のおいしいご飯を届けたい、という思いで2013年9月に精米事業に参入した。そうした中、おいしいご飯のためにはおいしさを引きだすためのハードが必要との思いがあり、炊飯器や精米機事業に参入した」と説明。

アイリスオーヤマ調理家電事業部事業部長の平元佑司氏

さらに、「"値ごろ"というのはただ単に安いという意味ではなく、商品が持っている付加価値と価格とのバランスがちょうどいいということだと考えている。弊社がお米家電を始めた理由には『すべての人においしいご飯を届けたい』という思いがあるので、ごはんがおいしいという付加価値に対してちょうどいい価格で消費者に届けることが重要。値ごろ感のある商品で、炊飯器市場のトレンドを崩していきたい」と、米家電事業に賭ける意気込みを語った。

初の5.5合炊きモデルを発表

こうした中で発表されたのが、2月1日発売の「銘柄炊きIHジャー炊飯器 5.5合」(KRC-IB50-B)だ。2016年9月に発売した「銘柄量り炊きIHジャー炊飯器」(RC-IA30-B)に次ぐIHジャー炊飯器で、ファミリー向けの5.5合用としては初めてのIHタイプとなる。参考価格は19,800円(税別)。

新製品のKRC-IB50-B。同社初の5.5合サイズ

炊飯メニューは、従来機と同じく「白米」「無洗米」「炊き込み」「おかゆ」「玄米」「煮込み/蒸し」の6コースを用意するほか、31銘柄の炊き分け機能を持つ。また、底面と内蓋部分の上下2カ所に温度センターを搭載。釜本体と内部の温度を同時に検知することで、銘柄にごとの微妙な火力調整を高精度で行えるようにした。

新採用の「極厚銅釜」。高い蓄熱効果により、釜全体に熱を行き渡らせ、ムラのない炊飯を可能にした

渦巻のような模様が施された底面。これも釜全体に熱を行き渡らせるための工夫

内釜は、厚さ3mm・重量約900gの「極厚銅釜」を採用、高い蓄熱効果により米をふっくらと炊き上げることを可能にした。アイリスオーヤマによると、この内釜は同価格帯の競合製品に対して、厚さが1.7~2倍、重量が1.4~1.5倍のものを採用しているという。

使いやすさもアイリスオーヤマのこだわりの1つ。多機能ながらもシンプルに仕上げられた操作ボタンも特長だ

アイリスオーヤマの炊飯試験。米食味鑑定士の資格を持つ担当者が、実食による官能評価を行いながら、理化学的な分析や光学的な解析を行っている

発表会では、新製品の「KRC-IB50-B」で炊いたご飯の試食や、同社のマイコン炊飯器「銘柄量り炊きIH3合」で炊いたものとの食べ比べも実施。新製品で炊いたご飯は、おいしさ、モチモチとした食感、ハリ・ツヤ、豊潤さなどすべてにおいて圧倒的だったが、マイコン炊きも想像していた以上にレベルが高かったのが印象に残っている。今後も7月に3合タイプ、10月に10合タイプのIHジャー炊飯器の発売を予定だ。アイリスオーヤマのお米事業に今後も注目したい。

「KRC-IB50-B」で炊いたご飯