明治大学は12月21日、真核微細藻類ユーグレナによるコハク酸の細胞外生産を発見したと発表した。

同成果は、明治大学農学部 小山内崇専任講師、理化学研究所、神戸大学、ユーグレナらの研究グループによるもので、12月8日付けのスイス科学誌「Frontiers in Microbiology」に掲載された。

生物が生体内で作る有機酸であるコハク酸が、近年バイオプラスチックの原料として注目を集めている。同研究グループはこれまでに、光合成を行う原核生物であるラン藻が、暗・嫌気条件での培養によって、細胞外にコハク酸や乳酸などの有機酸を放出することを明らかにしていたが、今回は真核微細藻類のユーグレナに着目。ユーグレナのなかでも最も研究が盛んに行われているEuglena gracilisを用いて研究を行った。

この結果、室温、明・好気条件下でユーグレナを培養後、暗・嫌気条件下に移行させることで、ユーグレナがコハク酸を細胞外に放出することがわかった。さらに、嫌気培養の条件として、培地を合成培地または緩衝液、温度を25℃または30℃、添加する炭素源を炭酸水素ナトリウムまたはグルコース、というように変化させたところ、温度に関係なく、合成培地の方が緩衝液よりも多くのコハク酸量を検出した。また、グルコースは、合成培地ではコハク酸量を減少させたのに対し、緩衝液ではコハク酸量を増加させた。炭酸水素ナトリウムは、培養液や温度に関わらずコハク酸量を増加させた。

一方、外部から炭素源を加えない場合、コハク酸は、細胞内に蓄積したパラミロンを原料として生産される。ユーグレナのパラミロンは、窒素が欠乏すると蓄積量が増加することから、明・好気条件でユーグレナを窒素欠乏にした後に、暗・嫌気培養を行ったところ、コハク酸の生産量が、通常培養のユーグレナの約70倍である869.6mg/Lに達した。同研究グループによると、これは微細藻類によるバイオコハク酸生産の世界最高記録であるという。

同研究グループは、今後光合成生物を利用した物質生産が発展することで、環境問題のひとつである温室効果ガス削減への寄与が期待されるとしている。

明・好気条件での培養したユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)の光学顕微鏡写真