気密性の高さで世界中から注目を集める、愛知ドビーの高級ホーロー鍋「バーミキュラ」。そのバーミキュラが、なんとIH炊飯器「VERMICULAR RICE POT」(以下、ライスポット)を発表した。発売は12月1日で、価格は税別79,800円。ホーロー鍋メーカーの作る炊飯器とは一体どのようなものか? 製品発表会にて、実際に製品を触り、試食をしてみた。

バーミキュラ ライスポットと、発表会の試食用に提供された料理。ご飯はもちろん、惣菜もすべてライスポットで作られている

そもそもバーミキュラとは?

バーミキュラとは、「ル・クルーゼ」や「ストウブ」のような、鋳物ホーロー鍋のブランドだ。ホーローとは、金属の本体にガラス質のコーティングをしたものの総称。金属の熱伝導性や蓄熱性がありつつ、ガラスのもつ匂い移りの少なさや、防錆性などのメリットもある。

バーミキュラの最大の特徴は「密閉性」。職人が手作業で加工することにより、鍋内部の密閉性を0.01mmの精度で確保しているという。ホーロー鍋は構造上「水を入れずに加熱」することを推奨していない製品が多いが、バーミキュラはその気密性の高さから、素材が持つ水分だけで食材を蒸す「無水調理」をむしろ推奨している。このため、2010年に登場したブランドながら、世界中から注目を集める人気ホーロー鍋ブランドとなっている。

愛知ドビーによると、バーミキュラ利用者から多くあった意見が「美味しく炊飯できる」という声。とはいえ、コンロによる炊飯は火加減が難しい。そこで同社は、バーミキュラを使用した炊飯器を開発した。

バーミキュラの鍋で美味しく炊飯できる理由は、高級な鋳物鍋ならではの蓄熱性と熱伝導性によるもの。前述した「密閉性」のために、鍋の中に適度な圧力を発生する。さらに、加熱されたホーローコーティングからは遠赤外線が発生し、米の芯までじっくり加熱。鍋底にはリブがあり、このリブが発生させる大きな泡が、沸騰時に米をしっかりと踊らせる。

バーミキュラのホーロー鍋。フタの裏には突起があり、食材から発生した蒸気を水滴にして鍋のなかに戻す。このため、水を入れない無水調理が可能。また、鍋底には「リブ」があり、食材の接地面を少なくすることで焦げ付きを防止。鍋内の水分が対流しやすくなる

操作はとてもシンプル

新製品のライスポットは、本体と内釜(バーミキュラ鍋)の2パーツから構成している。本体は卓上IHコンロに釜が乗ったような形で、この釜に専用のバーミキュラ鍋を入れて使用する。専用バーミキュラ鍋は、単体でも自宅のコンロなどで使用可能。このため、ライスポットを購入すれば、炊飯器と高級ホーロー鍋の2製品を手に入れられることになる。

ライスポット本体と専用バーミキュラ。付属品には米用計量カップと水用計量カップ、さらにフタ置き用の台がある。本体サイズは鍋搭載時で約W310×D310×H200mm。重量は鍋込みで約6.6kg

本体底面にはIH、側面にはヒーターを搭載しており、専用バーミキュラ鍋を包み込むように加熱できる

付属の米用計量カップと水用計量カップも非常に美しくスタイリッシュ。じつは専用バーミキュラ鍋には、一般的な炊飯器の内釜のような「水位線」が刻まれていない。このため水も自分で計量する必要がある

専用バーミキュラ鍋は、単体でホーロー鍋としてコンロなどでも使用できる。ただし、ホーロー製なので鍋とフタだけで約4.3kgと重い

ライスポット本体はIHとヒーターを搭載。釜全体でバーミキュラを加熱できる構造だ。これは米を炊くのに最適といわれる「かまど」の火加減を再現するための形だという。

内釜の役目を果たす専用バーミキュラ鍋にも様々な工夫がされている。まず目につくのは、通常のバーミキュラのように「フタのツマミ」がないこと。これは、炊飯時に「おねば」でフタ裏側が汚れるためだ。ツマミをなくすことで、フタ裏側のネジもなくなり、凹凸が少ないので洗うのも簡単。従来のバーミキュラは鍋底に平行線状のリブがあるが、今回は米が踊りやすいという円形に変更している。

通常のバーミキュラのようにフタ中央にツマミ状の「取っ手」がないため、フタ裏面によけいな凹凸がなく洗いやすい

鍋底のリブの形は円形形状。通常のバーミキュラの平行線状のリブよりも、より米が踊りやすい形だという

操作は本体下部のパネルから行う。ボタンはLEDが光って浮かび上がる仕様で、操作に必要なボタン以外は表示されないのも便利。ライスポットを使用していない時は、現在時刻の表示と、電源ボタンのみが浮かび上がる。また、電源を入れると「炊飯」と「炊飯以外の調理」を選択可能。炊飯の場合は炊飯量を選択して炊飯を開始する。ちなみに、炊飯モードは一般的な白米(ふつう・おこげ)のほか、玄米(ふつう・おこげ)、そしておかゆ(白米・玄米)から選べる。炊飯可能な量は白米と玄米が1~5合。おかゆが1~1.5合まで。

電源を入れると「調理モード」と「炊飯モード」を選択するボタンが表示される。炊飯時は、炊飯モードと米の合数を入力して炊飯開始

アラームが鳴れば炊き上がり。フタはホーロー鍋と同じ素材なので炊き上がりはかなり熱い。このため、鍋掴みを使ってフタを開ける必要がある

炊き立てのご飯は「米が立つ」という表現がぴったり。味は米一粒一粒に弾力があり、とにかく旨味が強い。また、鍋がスタイリッシュなので、鍋ごと食卓に持ってきても絵になるのも嬉しいポイントだ

手軽に炊飯できるライスポットだが、一点だけ、普通の炊飯器にあるものを搭載していない。それが保温機能だ。愛知ドビーによると「保温したご飯はどうしても味が落ちてしまうため」だそう。とはいえ、バーミキュラはもともと蓄熱性が高いため、比較的冷めにくい。筆者が発表会で確認したところ、30分程度放置しても、中のご飯は温かいままだった。

炊飯以外の調理機能も魅力的

専用バーミキュラ鍋はコンロにかけて煮物調理もできるが、ライスポット本体にも炊飯以外の「調理モード」を搭載している。調理モードでは中火・弱火・極弱火・保温から火力を選択、さらにタイマーをセットしてスタートする。特に注目したいのが「保温」機能、30℃から90℃まで好きな温度で鍋の火力をキープできる(炊飯器としての保温機能ではない)。チョコレートの湯せんやカスタードづくりといった火加減の難しい調理のほか、肉や魚の低温調理にも活躍しそうだ。

火加減と時間を入力するだけで無水調理ができる「調理モード」。調理後に任意の温度で保温する設定も搭載している

刻んだ野菜と調味料だけで、水を使わずに作られた煮込み料理「ラタティーユ」

なんとローストビーフもライスポットで作れる。中心がピンク色の絶妙な火加減に驚くばかり