同社では現在、イベントでの経験を基にソフトバンクが展開する「IBM Watson エコシステムプログラム」に参加。IBM Watsonを用いた企業法務サービス「コグニティブ法務案件FAQ」の開発を進めている。コグニティブ法務案件FAQは、企業におけるバックオフィス業務の効率化を目指したもので、ユーザーの質問をトリガーに膨大な判例・法令データから最適な回答を自動で返信するほか、各企業独自の方針や各業界に適した法的アドバイスを即時に行えるという。

弁護士ドットコム 技術部 R&Dチーム マネージャー 瀬戸口光宏氏

弁護士ドットコム 技術部 R&Dチーム マネージャーの瀬戸口光宏氏は「一般社員が法務部へ質問する際、回答の遅さが一般社員のストレスになったり、逆に法務部の立場では似たような質問・相談が多く対応に手間がかかる、といった問題が生じます。そこでまずはIBM Watsonを使ったシステムで即答し、そこで解決できなかったものをエスカレーションすることで個別対応が必要な案件との切り分けができるなど、一般社員と法務部の双方にメリットが生まれるわけです」と語る。

コグニティブ法務案件FAQでは上記のような「法務案件の即答機能」に加えて、契約書をアップロードすると膨大な契約情報を基に自動審査し、自社に適した契約内容への修正・作成やリスク情報の抽出ができる「契約内容の審査機能」、法務案件のナレッジを学習データとして蓄積し、業務の標準化や回答精度の向上を図る「法務ナレッジの蓄積機能」の提供を予定しているそうだ。 なお、契約内容の審査機能については、同社が運営するクラウド契約サービス「クラウドサイン」との連携も予定。クラウドサイン上で契約書の自動修正・作成を行った上で、そのまま契約相手と契約締結ができるサービスへ進化していくという。

さらに、同社ではコグニティブ法務案件 FAQを始めとした企業法務サービスを普及させるとともに、6月に新設した「LegalTech Lab(リーガルテックラボ)」において、人工知能関連技術やブロックチェーン技術等を有する企業、研究機関とのアライアンスを推進し、研究・開発を進めていく予定としている。市橋氏は、「法律業務の効率化を図る技術である『LegalTech』は、アメリカにおいて近年注目分野として定着しつつあり、FinTechに次いで、今後注目される応用分野として期待されています。我々は、日本発のリーガル・テックベンチャーとして、成長・拡大していきたいと思っています」と意気込みを見せた。 法務案件はその特性上、これまで自動化が難しいと思われていた分野のひとつだが、弁護士ドットコムではIBM Watsonを用いることで見事に自動化と業務効率化を実現している。今後の動向に注目していきたい。