アップルのiPhoneの新機種「iPhone 7」「iPhone 7 Plus」にFeliCaが搭載され、日本でもApple Payが利用できることが話題となっている。しかしなぜ、ハードウェアメーカーであるアップルが決済サービスに力を入れ、なおかつその世界展開を急いでいるのだろうか。その理由を考えてみたい。

iPhone 7/7 PlusのFeliCa対応に注目

去る9月7日(現地時間)、米国で新しいiPhone「iPhone 7」と「iPhone 7 Plus」が発表された。今回の新iPhoneは、光沢のある新色「ジェットブラック」が新たに提供されたほか、IP67の耐水・防塵性能に対応。さらにイヤホンジャックを廃し、完全ワイヤレスを実現したBluetoothヘッドフォン「AirPods」を提供するなど、デザインや機能面で注目すべき要素は多かったといえるが、中でも日本でひときわ注目を集めたのが、FeliCaへの対応と、それによるApple Payの日本上陸である。

Apple Payは、iPhoneに搭載された非接触通信の「NFC」と、指紋で生体認証をする「Touch ID」を用いることにより、iPhoneのみで決済ができるサービス。Apple Payでの支払いに対応したお店に行き、対応するリーダーにiPhoneをかざしてから、Touch IDに指を当てることで、あらかじめ登録しておいたクレジットカードを用いて簡単に決済ができるというのが大きな特徴となる。

アップルがApple Payを開始したのは、NFCとTouch IDの双方に対応したiPhone 6/6 Plusを発売した2014年から。だが従来のiPhoneには、NFCの通信方式のうち、主に海外で利用されているNFC-A/B方式のみが搭載されており、NFC-A/B方式に対応したリーダーがないと利用できなかった。

日本向けのiPhone 7/7 PlusはNFC-A/B方式だけでなく、FeliCaを搭載したことでApple Payの利用が可能に。Suicaなどによる決済が可能となった

だが日本で普及している非接触決済手段は、通信にNFC-A/Bではなく、FeliCaを用いたものがほとんどであり、店舗に用意されているリーダーもFeliCa対応のものが大半を占めている。実はFeliCaも「NFC-F」として、NFCの通信方式の1つとして定義されているのだが、日本以外であまり利用されていないことから、これまで日本以外のメーカーが開発したスマートフォンに搭載されるケースはほとんどなかった。

しかし今回アップルは、iPhone 7/7 Plusの日本独自モデルに、NFC-A/BだけでなくFeliCaも採用。SuicaやiD、QUICPayなどFeliCaベースの非接触決済基盤を用いることにより、日本でもApple Payを提供することとなったのである。