三菱電機本社が入居するビル

白物家電事業で安定した業績をあげているのが、三菱電機だ。

2015年度の連結業績では、家庭電器部門の売上高は前年比3.9%増の9,820億円、営業利益は17.6%増の638億円と、増収増益を達成している。全社売上高が前年比1.6%増の4兆3,943億円、営業利益が5.2%減の3,011億円であることに比べても、それを上回る成長率となっていることがわかる。

国内向け家庭用および業務用空調機器や欧州、アジア、北米向け空調機器の増加に加え、円安がプラス要素になったのが要因だが、パソナニックや日立アプライアンス同様に、国内におけるプレミアム戦略の推進が成果をあげていることが見逃せない。

もともと2006年に、内釜に炭を削って作る「本炭釜」を採用し、10万円を超える高級炊飯器「本炭釜」シリーズを投入することで、プレミアム家電市場を創出してきたのが三菱電機。今年はちょうど10年目の節目を迎えた同製品は、内釜に炭を使用し、2回に渡る焼成や、黒鉛化処理、そして削り工程を経て、約100日をかけて作り上げる手法を踏襲。発熱に必要な磁力線が、釜厚全体に浸透させることができる唯一の素材である炭にこだわり続け、美味しいごはんの象徴である「かまどで炊いたごはん」の実現に取り組んでいる。

こうした独自の取り組みは、ほかの製品でも同じだ。

冷蔵庫の新製品「置けるスマート大容量 WXシリーズ」は、保存するだけで野菜のビタミンCや糖量がアップする「朝どれ野菜室」を搭載。野菜室背面に光LEDを配置し、赤、緑、青の光を野菜に照射することで、ビタミンCの向上と緑化を促進することができる。野菜が、畑で光合成を行い、栄養素を生成する仕組みを冷蔵庫に再現した付加価値製品であり、冷蔵庫に保管しながら栄養素を高めることができるというユニークな製品だ。三菱電機のプレミアム戦略も依然として健在だといえる。

置けるスマート大容量 MR-B46Z

好調3社の課題とは?

だが、白物家電事業が好調な3社だが、手放しでは喜べない側面もある。

それは利益率の問題だ。

パナソニックでは、白物家電の5つの事業のすべてで、営業利益率が5%以上となっているが、アプライアンス社全体の営業利益率は、2015年度実績で2.7%。2016年度見通しでも3.8%に留まる。パナソニックの津賀一宏社長が、「すべての事業部において、営業利益率5%以上を目標にする」と宣言していることに比べると、それを大きく下回っていることがわかる。

三菱電機でも、家庭電器事業は全体の約2割を占めるが、営業利益率は全社水準を下回る形で推移を続けている。

日立製作所の東原敏昭社長兼CEOは、「白物家電事業については、利益率が3~4%のままであれば、再編を考えなくてはならない。この1~2年で、その可能性を見極めていくことになる」とする。

営業利益率の改善は、各社に共通した課題であることは間違いない。その解決策のひとつが、これまで以上にプレミアム戦略を加速し、家電事業の収益性を高めていくことである。 白物家電事業の舵取りは、各社とも利益率向上という慎重さ、プレミアム戦略による大胆な施策が求められているといえよう。