ドローンをより安全にフライトさせつつ、よりアグレッシブな撮影を
DJI JAPANとブラザー工業は8月19日、東京都・表参道にて、「新たな空撮テクニックを可能にするヘッドマウントディスプレー・ワークショップ」と題したイベントを開催した。
商業撮影に使われるようなドローンの場合、ドローンをコントロールするパイロットと、カメラマンが共同で作業することが多い。これによって、カメラマンはより良い映像を撮ることに専念し、一方のパイロットは実際に飛んでいるドローンの操縦に専念できる。
それでもパイロットは、ドローンだけを注視するわけにはいかず、手元のモニターを見なければいけない機会がある。そのとき、ドローンの位置や向きを見失う可能性が出てくるのだ。ドローン・パイロットの中村氏によると、実際に「800m先のドローンと向きを目視で把握できるが、モニターに視線を動かすことで見失うことがある」そうだ。
そこで注目したのがヘッドマウントディスプレイ。ヘッドマウントディスプレイを併用することで、ドローンを目で追いながら、横目でモニターを見られるようになる。いくつかのヘッドマウントディスプレイを試した結果、ブラザー工業の「AiRScouter」(エアスカウター、型番:WD-200A)がもっともよかったとのこと。
AiRScouterは、ヘッドバンドで固定するタイプのヘッドマウントディスプレイだ。「メガネ型では限界がある」として開発を進め、首を振ってもずれにくい安定性や、柔軟な位置調整を実現している。
上述の「AiRScouterがもっともよかった」理由としては、「画像が明るく屋外でも明瞭に判別できる」、「フレキシブルアームやボールジョイントを使って投影位置と奥行きを調節でき、必要なときに確認が容易」、「メガネやサングラスを付けていても問題ない」という3点を挙げる。特にパイロットの視点では、「両目でドローンを確認して飛行空間の安全を確保しつつ、『時々チラ見』でモニター確認」ができることが優位点としていた。
パイロットとカメラマンによる空撮風景。右のパイロットは主にドローンを目視しながら操作。カメラマンはモニターを見ながらカメラを操作する |
パイロットの中村氏は、AiRScouterのメリットとして、屋外でも良好な明るさ、目視の邪魔にならない位置調整、メガネやサングラス越しでも装着可能、といった点を挙げていた |
作例を見せつつ、AiRScouterの効果も解説。初めてAiRScouterを使った京都の撮影では、「ドローンを移動させながらカメラをパンする」という、アグレッシブな撮影ができるようになったことを紹介した。石垣島での撮影では、「屋内からモデルとトビラをすり抜け、横風の吹く屋外の現場」でも安全性に配慮してフライトができたことや、「(AiRScouterを使うことで)2km先の機体を把握して、安全にフライトさせる」ことが可能になったと述べた。
カメラマンはモニターを注視していて、ドローンを目視することは少ないそうだが、カメラ映像をパイロットが確認できることもメリットとする。「パイロットとカメラマンが『阿吽の呼吸』で親和性が増し、一歩進んだ空撮を取りたいという場合に心強い」(熊田氏)。
検証用途が多い中、実用的な活用例としてドローンに期待
ブラザー工業の片野氏によると、現在、AiRScouterの活用は主に工場での組み立て作業支援や遠隔作業支援、両手を使う作業現場だそうだ。それもまだ本格的な導入までは進んでおらず、実証実験・検証段階が多いという。そんな中で、ドローンを使った屋外の確認作業という用途に関しては、検証から一歩進んだ段階に来ており、今後の発展に期待を寄せていた。
ブラザー工業 ラベリング&モバイルソリューションズ事業開発部 チーム・マネジャー 片野智己氏 |
AiRScouterとドローンの親和性は高い。DJIのプロポにはHDMI端子があるので、AiRScouterを直結可能なのも大きい |
ワークショップでは、実際にドローンの映像をAiRScouterで体験。AiRScouterを屋外作業で使うときを想定し、投影位置の自由度(上下左右だけでなく、奥行きも30cm~5mに変えられる)、およびヘッドバンドの固定具合を確かめられた。ヘッドバンドに関しては、特に"つば"のある帽子をかぶるとよいそうだ。