ローランドは9日、製品発表会を開催し、ヘッドホン、イヤホン、スピーカー、マイクなど海外ブランド製品の輸入販売を9月下旬より開始することをアナウンスしたほか、米国のヘッドホンメーカー「V-MODA」の株式を取得し、子会社化したことを明らかにした。
まずは、社長の三木純一氏が登壇したのち、RJSカンパニー社長の山崎一彦氏から、ローランドの国内営業部門が再成長のフェーズに入っていることが報告された。ビジネス復調の兆しが見え始めたようだ。
V-MODAを子会社に
今回の発表会では多くの海外ブランド製品の取り扱いがアナウンスされたが、インパクトがあったのは、ヘッドホンメーカー「V-MODA」の子会社化だ。締結があったのは8月8日、つまり「808の日」だ。「808」とは伝説的なローランドのリズムマシン「TR-808」を指している。V-MODAのCEOであるVal Kolton氏は壇上で「今日は特別な日」だと、喜びを露わにした。
V-MODAの社史を紹介したのち、各製品のプレゼンへ。フラッグシップモデルである「Crossfade M-100」、ワイヤレスモデルの「Crossfade WIRELESS」、オンイヤーヘッドホン「XS」、インイヤーヘッドホンの「ZN」が今秋より発売となる。
Crossfade M-100は、50mmのデュアルダイヤフラムドライバーを搭載。ミリタリーグレードの堅牢性を誇り、ハウジング部分などで、各種カスタマイズパーツを用意している。また、音漏れを最小限にする独自技術「V-PORT V3 Airflow System」が採用されたモデルとなっている。カラーはMATTE BLACK、WHITE SILVER、SHADOWの3色。
Crossfade WIRELESSは、Crossfade M-100の基本性能を踏襲しながらBluetooth対応としたワイヤレスモデル。30分の急速充電が可能で、約12時間連続使用ができる。カラーはROUGE、GUNMETAL、PHANTOMCHROME、WHITE SILVERの4色を用意。
XSは、ファッション性を重視したモデル。装着時のシルエットの美しさにも拘っているという。Mクラス40mmのデュアルダイヤフラムドライバーを搭載。カラーはMATTE BLACK、WHITE SILVERの2色。
ZNは、亜鉛合金製ハウジングに8mmのダイナミックドライバーを採用したインイヤーヘッドホン。Kevlarによる、高強度を実現した「DiamondBack」ケーブルを使用。iOSデバイス向けの3ボタン、Android端末向けの1ボタンのモデルを用意する。
職人気質溢れるAudioflyのヘッドホン
ヘッドホン関連ではオーストラリアの「Audiofly」の取り扱いがアナウンスされた。セールスマネージャーのMatt Rowett氏は、Audioflyは伝統的な手法で細部に拘るデザイナーであり、職人であり、ミュージシャンであると説明し、オーバーイヤーヘッドホン「AF240」 、インイヤーモニター「AF120」「AF140」「AF160」「AF180」と、インイヤーヘッドホン「AF33」「AF45」「AF56」「AF78」を紹介した。
「AF240」は、40mmのネオジウムドライバーを搭載。無段階調整のヘッドバンドに、CORDURAファブリックを使用した着脱可能なAudioflexケーブルを採用している。遮音性も高く、取り外し可能な低反発イヤーパッドも特徴だ。カラーはBLACK、WHITEの2色を用意。
「AF120」「AF140」「AF160」「AF180」はPRO RANGEと銘打ったインイヤーモニター。全モデルでバランスド・アーマチュア・ドライバーを採用している。高精細なサウンドと高い遮音性を両立し、エンジニアやプロデューサーはもちろん、ミュージシャンのステージモニターから、一般的なリスニングまで、あらゆるシーンに対応する。ケーブルはこちらも耐久性の高いCORDURAファブリックを使用。
「AF33」「AF45」「AF56」「AF78」はPREMIUM RANGEを謳うインイヤーヘッドホン。こちらは各モデルそれぞれに異なるダイナミックドライバーを搭載する。高精細なサウンドは主にリスニングに最適であるとのことだ。また、CLEAR-TALK MICROPHONEを装備しており、スマートフォンでの通話が可能となっている(AF-45とAF-78の一部で非搭載のモデルあり)。
マイク、ニアフィールドモニターなど、充実のラインナップ
海外ブランドはこのほかに、Aston Microphones、Munro Sonic、Fluid Audioの製品を取り扱うことがアナウンスされた。どんな製品が発表されたのか順に見ていこう。
Aston Microphonesは、イギリスのマイクロフォンメーカー。革新的なメッシュヘッドを採用したコンデンサーマイク「Aston Spirit」と「Aston Origin」、リフレクションフィルター「Aston HALO」が紹介された。
「Aston Spirit」と「Aston Origin」は波型のメッシュヘッドを搭載し、タンブル加工の胴体を採用する。内部が衝撃吸収構造になっているため、ショックマウントを利用する必要がないという。また、ポップフィルターも組み込み式になっている。
「Aston HALO」は特許を取得したという素材、およびデザインを採用。半球体のボディが、上下左右で高い吸音性を実現する。ボーカル用ブースとして、宅録からバジェットスタジオまで、幅広い場面で活躍してくれそうだ。
Munro Sonicもイギリスのメーカーだ。こちらは、スピーカー設計技師のAndy Munro氏と、Sonic Distribution創設者のJames Young氏の共同開発によるニアフィールドモニターを投入する。
「EGG150」と「EGG100」という、その名の通り卵型のスピーカーを採用した2ラインで、著名なプロデューサー/エンジニアが中音域EQの監修にあたっている。アンプユニットはスピーカーと独立しており、「EGG150」はキャノンとRCA、「EGG100」はキャノンのみの入力端子を備える。箱型スピーカーと比べ、内部反響が抑えられるとのことで、音場豊かな高解像サウンドを実現する。
Fluid Audioは、ヨーロッパで設立されたニアフィールドモニターブランド。今回は参考出品ということだったが、「C5」「F4」「F5」に、「C5W」「C5BT」「F4W」「F5W」を発売するという。「C」シリーズはコストパフォーマンスに優れたモデル、「F」シリーズはスピーカーユニットの前面にボリュームフェーダーを取り付けるという大胆なデザインを特徴としたモデルだ。
新生ローランドを印象付ける製品群
最後にローランド/BOSSブランドのアクセサリーをピックアップしておこう。Winter NAMMに出品されたRoland Accesoriesに続いて、BOSS Accesoriesがラインナップされることになった。Roland Accesoriesとしては、「Gold Series Cable」と「Black Series Cable」という2タイプのケーブルが、BOSS Accesoriesからは、シールド、パッチケーブル、スピーカーケーブルに、ピック、ストラップが、それぞれ発売される。それぞれブランドカラーを全面に押し出し、店頭用に専用の什器を用意している。一際目を惹くのが、ピック用の什器で、BOSSのコンパクトエフェクターのデザインを踏襲したものになっている。ショップでとても目立つだろうなという印象だ。アクセサリーは、販売店で「毎日」売れる商品カテゴリーであり、全ての顧客が必要とする商品でもある。また、メンテの必要度が低く、販売店にとってはマージンの高い商品でもある。アドオンの売り上げも期待でき、衝動買いを喚起させることもできる。これまで、ラインナップされなかったのが不思議なくらいであるが、これでトータルなブランドイメージが訴求できるのではないだろうか。また、RolandブランドとBOSSブランドの棲み分けも納得がいく構成となっている点にも注目したい。
今回の発表では、新しいローランドの攻めの姿勢が伺えた。製品数の多さにも圧倒されたが、なにより力強いローランドが帰ってきたというイメージのイベントであった。今後の新製品への期待も弥が上にも高まる、といったところだろうか。