狙いは9月のiPhone商戦に向けた警告か

アップルは日本のスマートフォン市場で5割以上のシェアを占めるなど、iPhoneで絶大な人気を獲得し、事実上"独り勝ち"となっている。しかも7月に発表されたアップルの決算で、世界的にiPhoneの販売数を落とし減少を記録している中、日本市場だけは今期も約23%の伸びを示すなど、今なお突出して販売が伸びている状況だ。

それだけ高いシェアを持つアップルが、もしキャリアの中古端末の国内流通抑制に何らかの形で関連していれば、独占禁止法上大きな問題となってくる。現状、公正取引委員会側がキャリアとアップルの間の契約内容を把握しているわけではないようだが、そうした問題の発生を先んじて警告するべく、報告書ではあえて、キャリアだけでなく端末メーカーに対しても踏み込んだ指摘をしたのではないかと見ることができそうだ。

今回の報告書が打ち出されたタイミングからも、3キャリアに加えアップルへの警告を狙っていることが読み取れる。iPhoneの新機種は例年9月の上旬に発表され、中旬から下旬にかけて発売されることが多く、今年もその可能性が高い。そしてこの時期は、各キャリアとも新iPhoneの販売を拡大するべく"大盤振る舞い"ともいうべきキャンペーン施策を実施することが多い。

それゆえ公正取引委員会は、iPhone商戦でキャリアが販売拡大のため、キャッシュバック増大や下取り価格の大幅な優遇など、新iPhone販売拡大のための施策で販売適正化に向けた動きが逆戻りすることを懸念。新iPhone発表が近づいたタイミングを狙い、報告書を出したと見ることができそうだ。

一方のアップルも、公正取引委員会が報告書を出す8月2日に、「日本におけるAppleの雇用創出」というWebページを公開。アップルによる直接的な雇用だけでなく、アプリによる経済圏の構築による雇用の創出、そして部品メーカーなどサプライヤーとの取引で多くの経済効果と雇用を生んでいることを紹介。iPhoneの販売拡大が、日本で71万5千人もの雇用創出に結びついていると主張している。

アップルも8月2日に「日本におけるAppleの雇用創出」というWebページを公開。アップルが日本に71万5千人の雇用をもたらしていることをアピールしている

これまでアップルが、各国の経済や雇用に関する情報を公開したことはなかった。それだけに、アップルがこのタイミングでそうした情報を公開したというのは、公正取引委員会の動きを強く意識したものと見ることができそうだ。

独占禁止法を運用する公正取引委員会が、キャリアやメーカーに対する明確な姿勢を示したことの影響は決して小さくない。それだけに、今年の新iPhone商戦に、例年通りの大盤振る舞いな施策を実施することは難しくなったといえるだろう。そして今回の報告書を機に、今後キャリアのiPhone販売がどのように変化していくのかも、今後注目していく必要がありそうだ。