日本のモバイルSuica対応スマートフォンを海外に持っていって、その国の鉄道用アプリをインストールすれば、そのままその鉄道に乗れたり、逆に海外のNFC対応スマートフォンユーザーが、日本に来てそのままモバイルSuicaアプリをインストールして、改札を通れる、といった方向性に一歩近づいたのが、今回のワークショップでの合意だと山田氏は言う。もちろんそうなれば、MVNO向けのSIMフリースマートフォンのユーザーでも、モバイルSuicaが使えるようになる。

日本のユーザーが海外で、また海外のユーザーが日本で、そのままスマートフォンを使って公共交通機関に乗り降りできる可能性が出てきた

とはいえ、今回はNFCの通信仕様の部分で合意が成立しただけで、これからさらにデータ記録用ICと通信用IC間の通信仕様、データ処理・アプリ仕様といった、越えなければならない壁が立ちはだかっている。今回の合意によって、「グローバルモデルでモバイルSuicaが使えることを意味しているわけではない」(山田氏)。とはいえ、NFC通信仕様が統一されたことは大きな一歩だと山田氏は強調する。

すべての障害が取り除かれたわけではないが、大きな一歩だと山田氏

現在、NFC Type A/Bしか搭載しないスマートフォンは海外のグローバルモデルでは多いが、特にiPhoneの動向が大きな鍵を握っているだろう。AppleはNFC Forumの最上位のスポンサーメンバーとして中核に位置しており、NFC Forum規格へ準拠する確率は高い。

そうなると、iPhoneにも現在のNFC Type A/Bだけでなく、Type F、つまりFeliCaが搭載されることになる。その場合、おのずとモバイルSuicaへの対応も期待できる。今年9月に発表するとみられる次期iPhoneには恐らく間に合わないが、来年以降のモデルでは、iPhoneでもモバイルSuicaをはじめとしたおサイフケータイサービスが使えるようになるかもしれない。